戦争と平和(四) (新潮文庫)

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本棚登録 : 475
レビュー : 34
著者 :
制作 : 工藤 精一郎 
葡萄森兄夫さん 海外文学(古典)   読み終わった 

第4巻の本編は約630p。それでも前の3巻より100p少ない、と自分を励ます。それでもさすがに読み疲れしてくる。気力を振り絞って読み進めた。

 ボロジノで重い戦傷を負ったアンドレイは、ナターシャと姉マリヤに看取られる。一方、仏軍の捕虜となったピエール。モスクワ郊外の処刑場に連行され、他のロシア人らが銃殺されるのを目の当たりにし自分も死を覚悟する。が難を逃れる。その後、厳冬のなか、敗走する仏軍に引き連れられてゆく。これらの過酷な体験、そして、捕虜の一人カラターエフとの出会いがピエールの内面、人生観を変えてゆく。プラトン・カラターエフは、農夫出身の素朴な男だが、言わば“無思想の哲人”。ピエールは彼の飾らない言動に深い感銘を受ける。
 
 この仏軍の厳冬下の敗走は、極めて悲惨なものだったらしく、60万とも言われるフランス軍はほぼ壊滅してしまったという。だが、トルストイの描写は少々淡白であった。その悲惨な様相をもっとこってり味わいたかったので少し残念。また、聞き慣れない地名が多いため、地理的なイメージを抱きにくい。スモ-レンスク街道、カルーガ街道、タルチーノ陣地での戦闘、モスクワからニーメン河への撤退…。等と、多くの地名、地域が記述される。また、それを前提にロシア軍の「側面行軍」の状況が説明される。googleマップを参照しつつ読み進めたがそれでも、土地の位置関係はほとんどよくわからず。どのように行軍しての側面移動だったのか、図が浮かばかなった。
 フランス軍は、モスクワで約5週間を過ごし。10月初旬に西へ撤退開始。その後、一時60万に及んだ大軍は、敗走のなかでまるで融解するようにほぼ壊滅してしまったという。いったいなぜ?という疑問は読後の今もまだ残る。その歴史的なディテールは興味深い。他の歴史関連書で探ってみたい。

 ドーロホフとデニ-ソフら士官は、パルチザン小部隊を率いて森の中を進み、敗走する仏軍を追尾。仏軍へのゲリラ襲撃を行う場面がある。敵軍の規模人数を探るため、ドーロホフはペーチャ(ロストフ家、ナターシャの弟)を伴い、仏軍の軍服で変装して敵の野営地に潜入。敵兵と同じ焚き火を囲みながら、仏語で話して敵情を聞き出すのだが、ドキドキものである。当時のロシア貴族のフランス語能力がかなりのレベルだったことが伺える。
だが、その翌朝のパルチザン攻撃でペーチャは戦死。まだ少年のようだったペーチャの死は、哀れであった。
 そして、エピローグの章へ。よぅやく到達。1812年から7年を経ている。ピエールとナターシャは結婚。ニコライと公爵令嬢マリヤも結婚。それぞれ家庭を築き、幸せに暮らしている様子が描かれる。ここに至り、ピエールは穏やかな人柄の好人物になっている。常に他者を愛すゆえに、逆に周囲から必ず好感を抱かれる愛すべき人物へと、成長しているのだった。
 ちなみに、ピエールは、新たな政治活動を始めたことが触れられる。ペテルブルグへ長期出張して政治結社発足を画策した様子。ロシアの次の時代への胎動、激動の予感を伺わせた。
 二つのカップルの結婚。その前に別の章で、ピエールの妻エレンの突然の病死がさらりと伝えられていて、アレ?と戸惑った記憶がある。終盤での大団円を描くための、力ずくのストーリーテリング?という感も。

 さて、エピローグの章にはさらに第2部が続く。これは言わば“トルストイの歴史学講義”で、生硬で退屈な内容である。しかも70頁以上の分量。全4巻の大分量を読み進めて、へとへとになっている読者には、一種ダメ押しの嫌がらせのように、読む気力を阻喪させる。
割り切り出来るヒトは、このエピローグ章の2部は飛ばして読了しても構わないと思う。

レビュー投稿日
2017年1月12日
読了日
2017年1月9日
本棚登録日
2017年1月9日
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