復活(下) (新潮文庫)

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レビュー : 41
葡萄森兄夫さん 海外文学(古典)   読み終わった 

本作が上梓されたのは1899年。描かれた時代も同じく19世紀末だとすれば、ロシア革命は、ネフリュードフとカチューシャの生きた時代から30年ほど後、ということになる。カチューシャら刑事犯の他に、政治犯の存在も描かれ、社会の不条理に異議を唱える者たちがいたことが伺える。だが、まだ、貴族階級が社会をおさえる体制に、揺るぎや綻びは表面化していないように思われる。その後、革命の機運がどのように高まり、拡がって行ったのだろう。そうした歴史への興味関心もまた、募るのであった。そして、激動のロシア革命をトルストイに書いてほしかった、と夢想。ネフリュードフらのその後の30年も、トルストイの大作で読みたかった。

「復活」の下巻では、シベリアへの旅が始まる。徒刑囚カチューシャの道行きを追い、ネフリュードフも旅を続ける。道中、宿営地や監獄の情景がこと細かに描かれ、飽きさせない。
終盤、カチューシャは、ネフリュードフの思いを受け取ることを拒む。カチューシャは、同行の政治犯シモンソンに添いとげる人生を選ぶ。その場面、ネフリュードフは、カチューシャは、私の人生に負担を強いることをさけるために、自分の求愛を斥けたことを直感した、と描かれる。だが、そうだろうか?という疑念を抱いた。カチューシャは、ネフリュードフを選ばず、同行の政治犯シモンソンへを選んだ。それだけのように思われた。
また、私には、この場面はあっさりと感じられた。「戦争と平和」におけるナターシャの熱情の描写のような、真実味も臨場感も感じられなかった。そのためもあり、2人のロマンスとしては、少々の失望を味わった。映画なら、もっとドラマチックに描いてくれるだろうな、との思いもよぎった。

ネフリュードフ公爵は、カチューシャを追ってシベリアへ出立。それに伴い、地主階級の彼は、土地や財産を手放すことも決意する。カチューシャの運命への贖罪、という思い、信念があったことはわかる。それでも、ネフリュードフそこまでするか? という疑念は、終章まで拭いきれなかった。
また、物語の後半、監獄制度に犯罪抑止の効果は無く、逆に犯罪者予備軍を新たに生み出しているだけだ、とする批判にも紙幅が費やされる。かように筆者トルストイの、ロシア社会のありようへの批判がときおり噴出。その結果、ネフリュードフの行動や人生観を彫りこむ、説得力ある肉付けが追い付かなかったのではないか、という気もしている。

レビュー投稿日
2017年7月18日
読了日
2017年7月5日
本棚登録日
2017年6月22日
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