現代の社会主義 (講談社学術文庫 1010)

著者 :
  • 講談社 (1992年1月1日発売)
3.00
  • (0)
  • (0)
  • (3)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 17
感想 : 1
3

マルクス経済学者によるソ連崩壊後の社会主義の評論。筆者は旧共産圏の崩壊と混乱に困惑しながらも、社会主義の役割は終わっていないとしているが、この本を読んで本質的に今の社会には社会主義の全面的な適用は不可能であると感じた。
今の社会主義はおそらく均質・定常な社会でしか正しく成立しない。筆者はコンピューターの発達等で補えるだろうとしているが、おそらく無理。そう感じたのは以下の点から。

1.本来中心となる主義を持たない資本主義は誰か一人がそれを維持・管理する必要がない。一方主義が先に来る社会主義は万人が正しく同じ主義を共有するために主義の維持・管理が重要となり、結果として権威主義に陥る可能性が高い。

2.本来中心となる主義を持たない資本主義は常に不完全ではあるが、代わりに参加者各個の意思により自在に変化していけるのに対し、主義がまず先に来る社会主義は、権威者が常に主義を正しくアップデートしないといけない。未来を正確に予想できない以上、方針にはいつか誤りが生じ得るが、それを認めることは権威を保つうえで難しい。

3.商品価値(製造単価)は地域差、条件差が必ず生じる。習熟効果も含め適切に予想することで管理できると筆者はしているが、2で述べた通り、正確な予想は今の技術ではほぼ不可能。さらに、この場合習熟効果のようなものも権威者が決定することになる。そこには自由意志(自助努力)は作用せず、共産圏末期のように、できもしない計画を立て、できてもいないのにできた。と言うような事態が容易に起こりうる。また、商品単価が異なるものをどのように流通させるのか?わざわざ単価の高いものを買わせるには地域間交流を無くすなど強制力が必要となり、最適化は図られなくなる。
もし仮に筆者の言うように技術の進歩、今でいえばAIやブロックチェーン技術で瞬時に調整が図られるようになったとして、果たしてそれに人の意識がついていけるのか?おそらくはついていけずに自ら考える主体性を無くして、やがては隷属へと至るだろう。

4.労働単価(熟練工)の問題は、その技能習得のために使われた教育は社会の公共財であるから、結果として得られた能力は公共に返すべき=若年工と熟練工の給与は同じ。としているが、人間はそんな画一的なものではない。どうしても生まれ持ったスタートの差があり、同じ教育を受けた時の習熟の進度も異なる。また、努力しても何も評価されないとしたときに、果たして努力する気が起こるのか?同様に3で地域等での賃金の違いが生じた場合に、転職・移動の欲求が当然発生しうるが、それをどう制御するのか?人をただの物として扱って、気持ちを持つ生き物だということを忘れている。

以上、今の社会主義は所詮は限られた能力しか持たない人間の考えた中途半端な理想郷であって、現実世界から乖離しているためにいつかは行き詰りデストピアへと至る。それこそ万能の神の実存と、それへの絶対帰依でしか成立しないのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 政治経済
感想投稿日 : 2022年5月28日
読了日 : -
本棚登録日 : 2022年5月7日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする