実際に起きた事件をモチーフに書かれた小説集。どの事件も読み始めると、ああ、こんな事件があったなと当時の新聞やテレビニュースが頭に浮かぶ。小説の中に、当事者が点のように俯瞰され存在する。心理に分け入ったというのではなく、”小説家”の目で再存在された当事者がいる、という感覚。
「青田Y字路」これはニュースとしては一番記憶に残っている。下校途中で小学生の女の子が行方不明になった。何年かして外国人の青年が逮捕された。最後の場面が印象的。ずっと疎外の中で暮らしてきた青年、遊びの誘いを断られた小学生。その心情がY字路に漂う。
いずれも何かのきっかけがなければ何事もなく過ごしたのではないか、と思われる人たち。吉田氏は彼らを俯瞰する。けっこう冷めていると感じた。事件そのものが、う~ん、こんなこともあるのか、という様相ではあるのだが、読後はなんとも沈む。ルポだったらどうなのかな。
青田Y字路:小説野生時代2015.10,11月号
曼珠姫午睡:小説野生時代2016.5,6月号
百家楽餓鬼:小説野生時代2015.12,2016.1月号
万屋善次郎:小説野生時代2016.7,8月号
白球白蛇伝:2016.3,4月号
2016.10.15初版 図書館
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
本・ミステリー 日本
- 感想投稿日 : 2022年12月25日
- 読了日 : 2022年12月24日
- 本棚登録日 : 2022年12月25日
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