The Book of Illusions

著者 :
  • Faber and Faber (2011年5月5日発売)
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本棚登録 : 14
感想 : 1
5

 妻子を飛行機事故で失った主人公が、Hector Mann という映画俳優の失踪の謎に没頭することで心の傷を癒していく。ところが、Hector Mann の妻のもとから主人公に手紙が届き、はるか昔に忽然と姿を消したはずの彼が実はまだ生きていることが分かる。

 ついに主人公がHector Mann にめぐり会えたとき、Hector Mann は既に死期を迎えようとしています。そして、その死と同時に残された貴重なフィルムまでが燃やされてしまいます。

 しかも主人公の語りの中から、この物語が読者に読まれる時点で、既にこの主人公さえ死んでしまっているということが暗示されています。

 この作品は、いくつもの死と喪失の物語を重ね合わせていくことで読者に深い無常感を与えます。それは悲しみというよりも人生における重苦しい事実として、読者に突きつけられているのだと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外文学
感想投稿日 : 2016年3月13日
読了日 : -
本棚登録日 : 2019年12月28日

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