黄金を抱いて翔べ (新潮文庫)

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本棚登録 : 3042
レビュー : 395
著者 :
きゃべつさん 高村薫   読み終わった 

映画はまだ観てません。
高村薫の作品を読むと、だいたいいつももっと早く読んでおけば良かったと思う。それくらい良い。好き。重厚かつ硬質な文章で人間の内面を抉る高村ワールドに夢中です。
男たちのド派手な金塊泥棒を描いたハードボイルドクライムサスペンス!だと思って読むと肩すかしを喰らうと思う。たしかにそこへ向かって物語は進んでいくし、クライマックスの金塊奪取のシーンは派手でスリリングだけど、主題はもっと暗くてじめっとした別のところにある。泥棒仲間として組む六人の男たちの関係や、その中での感情の動き、それらが蒸し暑く猥雑な大阪を舞台に描かれている。とにかくすごく人間くさい。例えば国島殺害のシーンで「こういう成り行きになるとは、半日前まで考えてもいなかった。幸田の手も北川の手も、これまできれいだったのだが、半日前と今の自分らの間に何か落差が出来たということはなかった。飛躍はあっという間に起こり、ほとんど気付かないほど滑らかだった」(p,149)という心理描写もすごくリアルな人間くささがあると思う。人一人殺すのに、「飛躍」で済ましちゃうのか、との批判がありそうだけど、自分はこのあたりの幸田の気持ちにも妙に同調して悲しくなる。
幸田とモモについては、彼らの孤独と、もう最初っから全て諦めてしまっているような虚無感がとにかく切ない。それらの諦めの所為なのか、幸田とモモはお互いに対してすごく純粋に見える。純粋で誠実だよね。初恋煩った中学生みたい。いや今時の中学生より純粋か。「世紀の大泥棒が駆ける日……」からラストまではもう涙なくしては読めませんでした。あんまり泣きすぎて一旦休憩挟んだ。
ラストシーン、果たして幸田は死んでいるのか?と疑問に思ってちょっと調べてみたら連載当時の版では幸田は死んだと明記されていたみたいですね。文庫版の生死が曖昧な描かれ方もとても好きですが、ああやっぱり死んだのかと納得。
こういう即物的な願望は「神の国の話がしたいと思う……心の話がしたいと思う」という二人には無意味かもしれないけど、せめて同じ場所に埋葬してあげてほしいと思わずにいられない。

レビュー投稿日
2013年3月28日
読了日
2013年3月24日
本棚登録日
2013年3月24日
2
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