「ロマンはどこだ」
そんな決めゼリフが不安になるほど、本作はロマンがない。
期待していた9年ぶりのシリーズ新作、前作までは横浜を舞台のロマンあふれる銀行強盗劇が繰り広げられたというのに、今回は、いたって地味だ。10年ぶりの新作のスターウォーズは公開前からロマンにあふれているというのに。
最初の銀行強盗シーンも、ちょっと締まらない。本人達にも数年ぶりのブランクがあったようだが、気が抜ける結末。
また、成瀬達はいくつかの災難に巻き込まれるが、それらはカツ上げ、当たり屋、痴漢冤罪、振り込め詐欺など、ケチな犯罪ばかりだ。
敵役の火尻もほんと、せこい。
(スターウォーズでいえばグリーバス将軍くらい。
途中で出てくる第3勢力・大桑がダース・シディアス並の風格を持っているにも関わらず、だ)
最後のオチにも、いまいち爽快感はない。
オビワン・ケノービ的に表現すれば、ライトセイバーではなく野蛮な武器=レーザー銃をつかって敵を倒してしまったかのような、不本意さが残る。
この爽快感のなさ、まるで現代社会を表しているかのようだ。
ブラック企業とか、バイトテロとか、「なんだかなぁ」な事件が、やたらと一大事のように取り上げられる。
ロマンが欲しいのだけど、どこにあるのかわからない。
だが、ロマンのない世界でも、新たな希望が見える。
慎一くんも働き始めてるし、響野さんより役に立つ新キャラも登場。
先述したラストの展開も、現代に適合した、今までと違ったパターンを展開しているようにも見える。
要所要所で著者の「もう辞めようよ」的なグチが聞こえてくるが、それでも続編への布石が打たれている。
九年前にリアルタイムに「陽気なギャング」を読んで心躍らせた人たちにこそ、いま、改めて読んで欲しい一冊。
- 感想投稿日 : 2015年12月13日
- 読了日 : 2015年12月13日
- 本棚登録日 : 2015年12月13日
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