片手いっぱいの星

  • 岩波書店 (1988年7月20日発売)
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本棚登録 : 49
感想 : 5
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シリア・ダマスカスの旧市街のパン屋の息子14歳の少年が主人公。
彼の14歳から17歳までの日記。

パン屋の職人の父、きれいな母、妹のライラ。日曜には教会に通う家族。
彼は詩が大好きで、(特にハリール・ジブラーン)、自分でも詩を書く。
学校の成績が優秀で、新聞記者になることを夢見ていたが、パン屋の父に辞めさせられてしまう。
しかしパン屋の配達から、彼は新聞記者のハビープさんと知り合い、彼のやりたかったことが少しづつ、できるようになっていく。シリア革命の不安定な時勢で。

友人マハムートは芝居を書き、ヨゼフは将校に憧れている。
カーティブ先生は、生徒たちの可能性を信じ、いろいろな機会を与える。
それにより傷ついたり、勇気や自信になったり。

一番の親友であり尊敬しているのはサリームじいさん。
若いころは御者をしていた。いろいろなことを知っているし、話を聞かせてくれて、きちんと怒ってくれる人。
怒り方がふるっていて、みんなの前ではないところで、ちゃんと話してくれる。

彼が一番愛している少女はナディア。
父親は秘密情報機関で働く。

後に収監されるスズメを連れた変人。

「字を知ってりゃ、わしはいまでも、山や原っぱや谷間だけじゃなく、
バラのとげひとつひとつまで思い出すことができるんだよ。それにしても中国人ってのは、偉大だなぁ」というサリームじいさんの言葉から、日記をつける決心をした。

彼から見た、シリアの生活、父親や母親など大人、政府、彼の夢、価値観、怒りなどありとあらゆる普通のものが描かれていて、まったく知らないシリアの生活を一緒に暮らしているような気分にさせてくれる。
キリスト教徒の家庭で育ち、イスラムの習慣を外から見られる立場であるという幸運でありながら、自身もの習慣に組み込まれて生きなければならない部分もあるという不幸。
そしてシリア政府の元で生きる貧しい家庭の悔しさ。

それをはねのける地下新聞の発行。
彼の著しい成長記を読みながら、現在のシリアの子どもたちを想うと辛い気持ちでいっぱいだ。

*これはちょっとしたサプライズだったのだけど~
今回、読了したのでブクログにまとめようと検索したら、自分のHNがでてきてびっくり。これから読む本として2年前くらいに登録していたものだった。
そうとは知らず(すっかり忘れて)、今回図書館で手に取り、読もうと思った自分がいた。
読むことができてとてもよかった一冊だった。

下のメモ書きがあったのだけど、若林ひとみさんの別の訳本からこの本を読もうとしていたのか、何がきっかけで「これから読む本」に分類したのか、不明・・・

「同じく若林さんの訳による『片手いっぱいの星』は、シリア出身で現在はドイツに住む作家ラフィク・シャミが、故郷での少年時代を追憶して書いた物語です。不安定な政情のもとで、かけがえのない人生を生きるつましい人々の日常が、14歳の少年の日記という形で生き生きと描かれています。若林ひとみ」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年4月2日
読了日 : 2013年9月20日
本棚登録日 : 2011年4月2日

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