破戒 (新潮文庫)

  • 新潮社 (1954年12月28日発売)
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感想 : 327
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2022年再映画化決定とのこと。この小説が、令和の時代に理解されるのか、共感されるのかと再読。

ロングセラーにまだ作品名が残るが、教科書や国語便覧等に必ず登場するからではと思っていた。

出自の隠蔽という理不尽な背徳感を抱え続けて生きる青年・瀬川。父の教え「隠せ」は、彼の絶対だった。彼は、身分を隠して教員となっていた。
同輩への世間の非常な風当たり。
周囲の人の何気ないその出自に対する蔑みの会話。
彼は、いつかその事実が白日の下に晒されることに恐れ、常に緊張と束縛の中にいた。

隠し続ける苦しさの中、同輩の先輩の理不尽な運命をも退けようとする生き様に、感銘を受ける。
そして、遂に、教師であった彼は、生徒達の前で、自ら出自の告白をする。差別を受ける瀬川自身が頭を下げるのだ。

この身分差別の問題が、理解できなくても、自分が隠して生活しなければならない事柄、出生・経歴等として、読んでも見ても共感できると思う。

だが、日本の各地に残っていると思われるこの人種差別について考えて欲しいとは思う。日本のこの制度は、同民族間で歴史も長い。この問題を抱える地域では、未だ根深い。

瀬川が、その葛藤からの脱却だけでなく、何を破戒しこのラストを迎える事ができたか、何を破壊できなかったのかを想いたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新潮文庫
感想投稿日 : 2022年3月30日
読了日 : 2022年3月30日
本棚登録日 : 2022年3月30日

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