金閣寺 (新潮文庫)

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本棚登録 : 11610
レビュー : 1204
著者 :
celineshonagonさん 小説   読み終わった 

どうしたらこんな文章を書くことができるのだろう。決して短くはない話の初めから終わりまで、一時も途切れることなく続く張りつめた緊張感。理知的に構成されつくし、解析されつくした物語を成す一文一文は、驚くほど比喩と詩情に富んでいる。それでいて作者の筆の呼吸やリズムは人間的に乱れることがなく、その語りは読者である私たちを物語の方へ誘い引き寄せはしても、完全に内部へ入り込むことは許さない。「無欠」という言葉はこの小説の為にあるとさえ思える。(だから読んでいて疲れる。)そしてこの異様なまでの「完全性への固執」が、三島由紀夫の生そのものだったようにさえ感じられる。
いつも思うのだけれど、三島由紀夫の人生は当人によって緻密に計算・構成されつくした「現実世界の小説」で、自決も含めて彼は周到に用意したプロットをただひとつひとつ実行に移していったにすぎないのではないか、と。その証拠に(かどうかは実際分からないけれど)、作中で彼は主人公に述べさせている。「運命というものに、われわれは突如としてぶつかるのではない。のちに死刑になるべき男は、日頃ゆく道筋の電柱や踏切にも、たえず刑架の幻をえがいて、その幻に親しんでいる筈だ。」と。この小説『金閣寺』を読み終えて、そのゆるぎない、欠くところのない非現実的な美しさに、私は畏怖の念といわれのない悲しみを抱いている。

レビュー投稿日
2011年5月28日
読了日
2011年5月27日
本棚登録日
2010年10月30日
3
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『金閣寺 (新潮文庫)』のレビューへのコメント

すりむさん (2011年6月2日)

小林秀雄は「なんで最後に主人公を死なせなかったんだ?だから小説として完結してない」と三島に意地悪を言っています。どう思われますか? 三島にとってはこの時点はまだ「刑架の幻」の段階だったのかもしれませんね。

celineshonagonさん (2011年6月30日)

コメントを下さっていたのですね!ありがとうございます。私は逆に「なんで主人公を死なせなければいけないんだ?」という感じです。金閣を焼くことによってしか繋ぎえなった生への一筋の望み……こんなラストほど悲劇的で美しく完成されたものを他に思いつきません。すりむさんはどう思われますか?

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