世界的なベストセラーで、ポスト・ダヴィンチ・コードという宣伝だったので、多少突っ込みどころはあっても問答無用で楽しませてくれるような小説を想像していました。
さらに、先日読んだ”Possession”の表紙に推薦文を寄せていたので、エンタメとはいえ、結構読ませる文章を書く人なのかな?なんて期待もしていました。
期待しすぎました…。
内容はドラキュラの話。主人公の女性が、10代だった1970年代を振り返り、その父親は1950年代のことを語り、父親の恩師が1930年代に書いた手紙が残っている、という風に、過去を振り返り手紙や文書を読みながら謎に迫る構成は、確かにちょっとPossessionとかぶるものがあります。
デビュー作だからかもしれませんが、リズムが悪すぎ。Possessionと違って、細部こそが美しいような文章力はないので、ここはエンタメに徹して、あちこちバッサリ編集して読みやすくすべきでした。父親の手紙のクライマックスのあとに本編のクライマックスが来るのですが、本編の方があっさりしていて尻すぼみ。メタフィクション的仕掛けもちょっと取ってつけたようだし。正直、もうちょっと丁寧に編集したら面白くなったんじゃないかと思うと残念。
ドラキュラもさっぱり怖くないし…。父親にしても恩師にしてもすごく優秀な歴史家の設定なのに頭のいい人の魅力が全然感じられないのもつらいところ。イギリス出身の恩師が、まるっきりアメリカ人にしか思えないのもなあ。
トルコやハンガリー、ルーマニア、ブルガリアが舞台になるんですが、政治的に正しく書こうという意識は感じられるのに、結局アメリカ人はトルコも東欧もなめてるんだなというのが透けて見える(たぶん無自覚)のも微妙でした。
ダヴィンチ的ジェットコースターだったら、こういうアラも目立たなかったのかもしれないと思うんですよね。
映画化されるそうですが、まあ2時間に縮めたら面白いかも…?
なんだかんだ最後まで読めたし、もっとつまらない小説を読んだこともいくらでもありますが、前評判で期待していたのが悲しいところ。☆2つでもいいんだけど、出てくる人のほとんどが無類の本好きであるところに共感したのでおまけで☆3つ。
- 感想投稿日 : 2010年7月4日
- 読了日 : 2010年7月4日
- 本棚登録日 : 2008年7月14日
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