Cloud Atlas: A Novel

3.40
  • (1)
  • (1)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 11
レビュー : 3
著者 :
cerisaieさん イギリス   読み終わった 

いろいろな意味でとても「面白い」本でした。ちなみに和訳はまだ出ていませんが、きっと出るかな?

6つの短編小説からなっていますが、いわゆる短編連作みたいな感じともちょっと違います。1つ目の話は真ん中(しかも文の真ん中)でブチっと切れ、何事もなかったように2つ目の話が始まり、それも真ん中で途切れて…という形で、話の前半だけが5つ続いた後6つ目の話が真ん中に来て、それをはさんで後半だけがまた5回続きます。
①②③④⑤⑥⑤④③②①
っていう、入れ子構造というかマトリョーシカ人形みたいな形です。

それぞれの話は、①の19世紀から⑥の遠い未来(西暦3000年くらい?)まで、過去から未来に進んでいきます。②の登場人物が①を読んでいたり、④が映画化された物を⑤の主人公が見たり、という直接的なつながりもあり、共通するモチーフやテーマもあって、それぞれ全然違う話なのに全体できちんと一つの作品になるようになっています。

また面白いのが、それぞれの舞台になっている時代を反映して、①から⑥まで全部ジャンル・スタイルがちがうこと。19世紀後半のアメリカ人弁護士の航海記という形を取る①は多分メルヴィル風、1975年のカリフォルニアを舞台にした③はチープな(でもつい先が気になる)スリラー、といった調子です。

テーマ自体には、ものすごく新味があるわけではないんですが、こういう形で1000年にわたる時を俯瞰して見せられるというのは効果的でした。
この構成を思いついたこと、思いつきに終わらずにまとめきる技量があったこと(普通これだけ違うスタイルで書けないよ)がこの作品のよさでしょう。

前半は、面白くなってきたところで突然話が切れて、また全然違うスタイル、時代に放り込まれるのでちょっと戸惑うしフラストレーションがたまりますが、そのジェットコースターに振り落とされずについていければ、ちゃんと満足感を味わえます。

著者のDavid Mitchellは30代後半ですが、すでに3回ブッカー賞の候補になっていて、これも2004年のShortlistに残りました。広島で8年間英語教師をしていたそうで、邦訳が出ている「ナンバー9ドリーム」は日本が舞台だとか(未読)。
この作品もきっと日本でも愛されると思うのでぜひ訳してほしいですが、6つのスタイルの違いが出ないと台無しなので、訳す人は大変だろうな…。
英語としては①の19世紀のボキャブラリーと、⑥の創作未来語がやや読みにくいかも。慣れると魅力的なんですが。

魂よりも大脳がより震えた感じではありますが、大変楽しませていただいたのでここはちょっとおまけで☆5つで。

レビュー投稿日
2010年7月3日
読了日
2010年7月3日
本棚登録日
2007年6月5日
0
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『Cloud Atlas: A Novel』のレビューをもっとみる

『Cloud Atlas: A Novel』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

『Cloud Atlas: A Novel』にcerisaieさんがつけたタグ

ツイートする