2006年の発売後、割とすぐに読みました。
SFとしては破綻もあるんですが、私は好きです。
結局、作者はSFとして、歴史改変ものとしての完成度を高めることには興味がなかったんだと思うんですよね。むしろ、「SF的に世界観をきっちり確立することがポイントの話じゃないから」っていう、確信犯のように思います。
うろ覚えですが、この作品について確かイシグロは「生きる悲しみを描きたかった」というようなことを言っていたと思います。
人生って悲しいものじゃないですか。みんな最後は死ぬんだし、一生の間にたくさんの夢をあきらめて、たくさんの人と別れていく。
そういうメタファーとしてみるなら、彼らは私たち自身。
お得意の「信頼できない語り手」になる語りはサスペンスを盛り上げてくれるし、切ない青春ものとしても読めます。
個人的には「日の名残り」のほうが好きですけれど。幅広い層に愛される小説だと思います。
主人公は若い女性ですが、(理由はネタバレになるので言えませんが)年齢より幼くピュアな一面があり、英語もそれに合わせて簡単な言葉を多用しています。そういう意味でも比較的読みやすい1冊。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
イギリス
- 感想投稿日 : 2010年7月4日
- 読了日 : 2010年7月4日
- 本棚登録日 : 2010年7月4日
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