怪談 牡丹燈籠 (岩波文庫)

著者 :
  • 岩波書店 (2002年5月16日発売)
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感想 : 47
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当時、外国から入った速記によって書かれた圓朝作の怪談噺。二葉亭四迷らの言文一致運動に影響を与え、小泉八雲が訳した初の日本語の怪談となった。
前半は、新三郎とお露の幽霊譚とお露の父である飯島平左衛門家の騒動が交互に語られ、後半、ふたつの物語が出合い仇討へとつながる。

「語り」のうまさは、続きが気になり、一気に読ませてしまう面白さ。この引っ張り方は、ひとむかし前の「ジェットコースタードラマ」のよう。
怪談というが、幽霊が出るのはお露が出てくる有名な「お札はがし」の場面のみ。
しかも、それも、後で半蔵が、
「実は幽霊に頼まれたと云うのも、萩原様のあゝ云う怪しい姿で死んだというのも、いろ/\訳があって皆みんな私わっちが拵こしらえた事」と告白・・・。
え?幽霊はでっち上げ?

スカッとする復讐劇かというと、最後に孝助が源次郎、お國を仇討する場面、「…なぶり殺しにするから左様心得ろ」と顔を縦横にズタズタに切る。凄惨で非道く後味は悪い。


今回再読して気がついたのが、新三郎のところへ、お露の幽霊があらわれるシーンの下駄の音。
最初の登場では、「カラコン/\」。次に登場するシーンでは、「カランコロン/\」。
最初、お露が幽霊だとはわからないために軽く、お露が幽霊だと気付いた後には重たい。
落語で聴いたときは、違いあったかなぁ・・と、youtubeで円生、志ん生、小朝らの噺を確認すると特にそこで違いを出してはいない。これは、「幽霊噺」として聴き手も了承しているので「カラーン、コローン」と陰にこもった音での表現するしかないのだろう。

岡本綺堂が14歳のころ、速記本で読んで、そんなにこわくない、と高をくくって寄席に圓朝の噺を聴きにいったら、「円朝がいよいよ高坐にあらわれて、燭台の前でその怪談を話し始めると、私はだんだんに一種の妖気を感じて来た。」で、終わった後、「暗い夜道を逃げるように帰った」という圓朝の語り、聞いてみたいものだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノワール
感想投稿日 : 2014年5月19日
読了日 : 2014年5月9日
本棚登録日 : 2014年5月7日

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