震える岩: 霊験お初捕物控

著者 :
  • KADOKAWA(新人物往来社) (1993年9月1日発売)
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感想 : 11
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内容(「BOOK」データベースより)
ふつうの人間にはない不思議な力をもつ〈姉妹屋〉のお初。奇怪な幼児殺しの謎を追うお初のまえに100年前の赤穂浪士討ち入り事件が…。


とある長屋で死んだはずの蝋燭売りの吉次という男が生き返った。生き返った吉次はおせんという名の女児を殺し油問屋の樽の中に投げ入れた。正体を見破ったお初と右京之介だったが、捕まえた吉次の体は既に死後いく日も経ち腐っていた。吉次は何者かの魂に体をのっとられていたのだ。吉次が死に、事件は終わったと思われたが再び、長次郎という名の男児が殺され川へ投げ捨てられていた。犯人は助五郎という湯屋で働く男であった。彼もまた死霊に体をのっとられていた。その、死霊の正体は内藤安之助という100年前に妻と2人の子を殺し、自分自身も切られ亡くなった侍だった。やがて、内藤安之助が亡くなった頃に起きた赤穂浪士忠臣蔵と今回起きた幼児殺しが結びついていく。内藤安之助は吉良にも赤穂浪士にも怨みを持っていた。内藤は真面目な性格だったが、町人を襲った犬を切り、生類憐みの令によって禄を奪われ浪人になり生活は困窮し、孕の妻と2人の子を養うために辻斬りを始め、徐々に内藤の心を蝕み狂わせていく。その頃、吉良邸では赤穂浪士に備え、腕の立つ者を召し抱えていた。内藤も働き口を求め赴くが断られ、それをきっかけに精神は崩壊し、妻と2人の子を殺す。彼の異常に気付いた赤穂浪士の1人が内藤を切り、産まれたばかりの3人目の子供を助ける。死霊となった内藤は我が子と同じ名の幼児を殺し、3人目の子供の子孫で妻と同じ名のりえも殺そうとしていた。死霊は助五郎の体から離れ、右京之介の父に取り憑く。りえを殺そうとするが、お初は赤穂浪士達の力を借りたかのように内藤を倒し、りえを助ける。

死にたい、という思いや深い悲しみを持っている人の心の隙に入り込む死霊。右京之介の父との確執。内藤に憑かれた右京之介の父もまた、息子との確執に自身も深く悲しんでいたのだ。

時代に翻弄され、死を選ぶしかなかった内藤と赤穂浪士達の思いや時代背景が描かれている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年5月12日
読了日 : 2014年5月12日
本棚登録日 : 2014年5月6日

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