愚管抄を読む (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社 (1999年6月10日発売)
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感想 : 6

世の中や歴史の流れをつぶさに観察していくことで、世界の道理を明らかにしようとした。

眼前の出来事を仮の世界として廃さず、真理の表れだと捉える姿勢は天台宗の流れをくんでいるとも思える。

多様な道理が交錯する中で、次第に大きな強い長い道理を求めていくと、すべてのものが絶対的ではなく流動的で相対性を免れないことに気がつく。そんな中、天皇の系譜だけは神代の時代から変わらず皇室という同じ血(皇胤)から出ているという不変の道理を見つける。

さらに神代の時代に天照大神から天児屋根命に子孫(天皇家)の補佐を頼まれたことが、自身の出自である藤原北家の摂関体制を不変のものとする根拠にもなる。

客観的な叙述に見えるがその背後には慈円の主観がはっきりと浮かび上がる。同時代の歴史書と比較すると面白い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 宗教/哲学/心理学/精神分析
感想投稿日 : 2010年9月28日
読了日 : 2010年9月28日
本棚登録日 : 2010年9月28日

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