赦しへの四つの道 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

  • 早川書房 (2023年11月15日発売)
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感想 : 11
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分断の物語。性別、持つものと持たざるもの、その入れ子構造、オールドメディアとネット。ネットについては1990年代の知見ということで、先見性というべきか偏見というべきか。

『帰還』というブービートラップが大爆発して再起不能に近い傷を負わせられながらもなお読み続けているのは、ゲド戦記三部作+『風の十二方位』や『夜の言葉』、『闇の左手』に受けた好ましい衝撃よ再びと望んでいるからに違いない。しかし、出会えない。
『西のはての年代記』でもそうだったが、物語というより設定語りという印象が強い。本書においては各編後半には物語になるとしても、導入の設定語りがどうにもあわない。
本書に収められている四篇のうち三篇を読み終えたあとの『ある女の解放』に感じられた読みやすさは、それ以前の説明で十分に世界に慣れたためだろうと思われる。

SF的な観点で言えば、1990年代の創作に後知恵でつっこむのも野暮だが、ハードウェアを無批判に受け入れているのに対し、ネットやそこにある情報を含むソフトウェアとは反発しあっているように見えること。
このゆえか、惑星間植民を成し遂げた文明がもつであろう諸テクノロジーがアンバランスに見える。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2024
感想投稿日 : 2024年3月17日
読了日 : 2024年3月17日
本棚登録日 : 2024年3月16日

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