樅ノ木は残った 01 第一部

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  • 青空文庫 (2018年2月14日発売)
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底本は新潮社「山本周五郎全集第九巻 樅ノ木は残った(上)」「山本周五郎全集第十巻 樅ノ木は残った(下)」、上巻の四分の一あたりまではこりゃすげえ陰謀モノだとうきうきしていたのだが、読んでいるうちに個人的読書史における時代小説のありようがおもいだされてきて、次第に消沈していくことになった。

「時代小説」という語感は、「時代」すなわち「歴史」に重きがあり、「小説」の意味合いが小さいと思うのである。「時代フィクション」であればそのような間違いは起こらなかったかもしれない。つまり、登場人物の心情などはフィクションであるにせよ、人物相関や出来事はそうであるまいという認識を、時代小説を読むようになってから一定期間もちつづけていたということである。時代小説で得た知識を当てにしちゃってた感のある時期を、一定期間、もちつづけてしまったということである。
おつうさんが架空の人物だと知ってしまったわけである。ウェットな部分は信用ならんと痛切に思い知ったわけである。
以後、時代小説のウェットな部分は問答無用ですべてフィクションと断定し、読書体験もある程度それに引きずられるようになったと思う。だからかもしれない、時代小説はあまり読まなくなった。

上巻の四分の一あたりを過ぎた頃か、ウェットな描写が増えた。
連載作品だからか。人気取りのためか。筆安めか。
連載作品にありがちな方針の転換は感じられなかったが、そのぶんというか、ウェットな描写が多めだと感じられて、余計な勘繰りをすることになった。
そして思う。上巻の四分の一あたりまでの路線で終始一貫した作品であったらどうだったかと。

原田甲斐という人物の名前と「樅ノ木は残った」というフレーズを初めて知ったのは手塚治虫の短編『げてもの』である。時代劇なのに黒塗りの車とか登場しちゃう、いつものメタな手塚作風。『どろろ』のコミック巻末で読んだのは小学生の時だと思う。そもそも小説のタイトルであったことを知ったのはずいぶん後のことで、どんな人物のどんな物語であるかは知らずにきた。
読中ちょっとぐぐってみたら、本書の内容は、歴史的評価とまっこうから対立するものであるらしいと知れた。それをとやかく言う書評は見受けられなかったが、いささか無理筋に見える結末=一般的史実とどのように対抗するのかということを第一の楽しみとして読むようになった。
個人的な感想では、無理筋であろう。

ともあれ、青空文庫は良い文明。関係者各位に感謝を。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年8月19日
読了日 : 2022年8月19日
本棚登録日 : 2022年8月19日

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