Simple Chess: New Algebraic Edition (Dover Chess)
- Dover Publications (2003年1月7日発売)


この本はストラテジーの入門書でありポジショナルプレイの教科書である。ポジショナルプレイとは少しずつ自分にとって有利なポジションにしていき、積み上げたポジションのアドバンテージを勝利に結び付けるプレイスタイルのことだ。そのためにはポジションを理解し評価できなければならない。この本はポジションを理解し評価するための勘所を解説する。
ポジションを評価するとはどういうことなのだろう。駒の損得ならすぐに分かる。だが、どちらの側にも駒の損得がない場合、どこをどのように見ればそのポジションの優劣が分かるのだろうか。ポジションを評価する鍵、それはポーンストラクチャーである。
ポーンの配置によって弱い場所、弱いポーンというのができる。弱い場所、弱いポーンというのは、味方のポーンによって守ることが出来ない場所、ポーンのことである。そして、相手のポーンに攻められない場所が自分にとって有利な場所になる。ポーンストラクチャーの重要性と、ポーンストラクチャーによって生じる弱い場所、弱いポーンを理解することが、ポジションを評価するために重要なのである。
しかし、ポジションの優劣は、ポーンストラクチャーそれ自体によってのみ決まるのではない。各ピースが自由に動ける範囲はポーンストラクチャーによって決められる。また、ポーンストラクチャーによって生じた弱い場所、弱いポーンを守るためにピースの動きは制限される。つまり、ポーンとピースの関係性こそが重要なのであり、それがこの本のテーマとなっている。
扱う要素を各章毎に絞っていて、その章の導入部分でその要素がどういうものなのかを簡単に説明する。そして、実戦を追いながら要所要所で詳細に解説していく、という構成になっている。その説明も非常に丁寧だ。
扱ってる内容は難しい。だが、最後まで読めば得られるものは大きい。特にこの本を読む前と後では、ポジションの見え方がはっきり違うはずだ。
- 感想投稿日 : 2012年2月8日
- 読了日 : 2010年12月21日
- 本棚登録日 : 2010年12月21日
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