偶然の祝福 (角川文庫)

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本棚登録 : 2038
レビュー : 278
著者 :
はらめさん 生き方   読み終わった 

息子と犬のアポロと暮らす「私」の前に現れ、去っていくものたち。喪失の悲しみと引き換えに残される幸せを掬い取る7つの物語。

物語は文章を書くことを生業としている「私」が中心である。文章を書くことを志した幼い日、小説家としてデビューし、始めてもらった本の印税で買った犬のアポロと暮らし始め、妻子ある指揮者の恋人と出会い、彼の子供を妊娠、出産、そして息子とアポロと過ごす日々。7つの物語からは「私」の人生の歩みが垣間見えるが、それらの物語は時間の流れと関係なく並んでいる。そのため「私」の記憶の淵からふわりと浮き上がり、思い出した順に並べられているような印象を受けた。文章も切なく儚げな雰囲気が漂っており、「私」がふと昔を思い出し、過ぎ去ってしまった日々に寂しさを重ねているようだった。

思えば、日々は“時間の喪失”の繰り返しである。楽しかったことも悲しかったことも、次の瞬間には失われた時間になる。その出来事が記憶に残っていれば良い方で、大半の時間は記憶の籠からこぼれ、永遠に失われていく。確かに私が生きていたあの時間は、どこへ行ってしまったんだろう。私が歩いたそばから通り過ぎた道が消えていくようで、避けようがない虚しさを覚えた。

レビュー投稿日
2014年8月13日
読了日
2014年8月5日
本棚登録日
2014年8月13日
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