桐島、部活やめるってよ

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レビュー : 932
著者 :
はらめさん 青春   読み終わった 

バレー部のキャプテン・桐島の突然の退部が、5人の高校生達に波紋を起こしていく。部活という共通点から浮かび上がる17歳の青春群像小説。

著者は早稲田大学在籍中の2009年にこの作品でデビューしており、私の年齢に比較的近い。年が離れた作家が書いた青春小説は、年代のギャップを感じながらも仕方ないと思って読み進めるものである。しかしこの物語では違和感なく、すっと物語の世界に溶け込める。部活に打ち込む熱心さ、友人との微妙な距離、将来への期待と不安、どれもが高校時代のそれで、まるで私自身の学生時代に戻ったかのように近しく感じることができた。

5人の高校生がそれぞれの視点から自身の高校生活を語っていくのだが、題名にもなっている“桐島”は語り手とならない。噂話といった登場人物たちの会話には登場するのだが、直接姿を現す描写は一切ない。桐島はバレー部のキャプテンでありエースで、賑やかな友達も彼女もいて、学生生活を満喫している生徒のようであるが、そのような華やかな生徒が学生生活の中心人物、主役であるのではなく、すべての学生が各々の学生生活の主役であるということを示しているように思った。

5人の高校生はそれぞれタイプが異なるが、特に前田涼也と菊池宏樹はまったく正反対である。映画部の前田涼也はクラスでも目立たないおとなしいタイプである。教室内の“階層”に敏感で常に劣等感を感じている。しかし大好きな映画のことになると活き活きとして、専ら映画部の仲間と映画を撮ることに熱中している。菊池宏樹は学生服を自己流に着崩し、クラスでも賑やかな仲間とつるむタイプ。一応野球部ではあるが練習には全く顔を出さない。日々楽しければそれでいい、というような人物である。涼也が劣等感を抱いている対象はまさに宏樹のような人間である。涼也は、自分は“階層が下”の人間であり目立たないようにしなければならない、とクラスの中のポジションを過剰に気にしている節がある。一方宏樹は毎日派手に楽しく過ごしているように見えるが、本人は打ち込めるものがない虚無感を感じている。そんな宏樹が映画の撮影をしていた涼也を偶然見かけた時、宏樹は涼也にひかりを感じる。夢中になれるものを持っている人間だけが放つことができるひかりを。涼也にとって宏樹は“上”の人間であるが、宏樹にとっては涼也が、自分にないものを持つまぶしい存在だったのだ。人の価値はひとつの側面だけでははかることができないのだ、と感じた。同時に、もしかすると自分が知らない自分の価値を他人が知っていることもあるのかもしれない、と思った。

レビュー投稿日
2014年1月19日
読了日
2014年1月10日
本棚登録日
2014年1月11日
4
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