東京タワー (新潮文庫)

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本棚登録 : 5759
レビュー : 616
著者 :
はらめさん 恋愛   読み終わった 

恋はするものじゃなく、おちるものだ。

年上の詩史と過ごす甘くゆるやかなひと時―大学生の透の世界は満ちたりていた。一方、透の親友である耕二は女子大生の恋人がいながらも、蠱惑的な喜美子との肉体関係に夢中だった。夫がいる年上の女性と大学生の少年。東京タワーが見守る街で、二組の恋人たちが繰り広げる恋愛を描く。

私が本棚にずっと置いておきたい一冊。夜の間だけ暗闇にぼんやり浮かび上がる東京タワーの灯りのように、幻想的で儚い二組の恋人たちの物語が綴られている。詩史も喜美子も夫がいるのだが不倫の泥沼感は全く感じられず、むしろ純粋な感情(喜美子と耕二は感情と言うより欲望)で恋をしている。夫がいるが故にどちらの恋人たちも、いつかこの関係に終わりが来ることを感じながら寄り添っている。物語は情熱的な一方、終末の寂しさを常に漂わせている。さらに著者の静かな文章と絶妙な言葉選びで、ため息をついてしまうくらいに美しい物語に仕上がっていると思う。

「恋はするものじゃなく、おちるものだ」という言葉の「おちる」は「堕ちる」にも通じているように思う。透も耕二も、不覚にも恋愛にどっぷりと浸かっていく。有り余る時間は学生の特権である。しかし透にとって詩史が全てであり、その有り余る時間で部屋にこもり、彼女からの電話一本をひたすら待ち続ける。詩史がいない場所には興味を持てず、どこにいても何をしていても詩史のことを考えてしまう。透の世界が徐々に詩史に染まっていく様が、恋愛の静かな狂気を感じさせる。そして読者もまた、東京タワーの下で繰り広げられる恋愛模様に惹き込まれ、心を奪われていくだろう。

レビュー投稿日
2014年5月6日
読了日
2014年5月1日
本棚登録日
2014年5月6日
3
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『東京タワー (新潮文庫)』のレビューへのコメント

大野弘紀さん (2019年1月16日)

このレビューを読んで、読んでみたくなりました。

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