雪国 (新潮文庫)

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川端康成を読むのはこれで二作品目。冒頭の夜汽車に揺られる一連の描写が、どことなく芥川の『蜜柑』にも似て、たいしたことを描写しているわけでもないのだけれど、物憂げな心持ちにさせる。

銀白の雪国、閉ざされた世界、島村のいうように「徒労」でしかないのかもしれない駒子の、その無垢さを象徴するかのように、それはいつも白い。窓越しの駒子の赤い頬との対比が、まるで美人画のようで、たおやかなれど官能的でさえある。

おわりは突然やってくる。以前に読んだ『みずうみ』もそうだが、彼の物語は唐突にはじまり、唐突におわる。まるで登場人物たちの人生を適当な尺で切り出してきたかのように、まったくもって完成しない。着地点がわからないから戸惑うのだけれど、現実の日常にもそれがないのと同じで、彼の語り口はどことなく真に迫るものがある。わたしには永遠に訪れることのできない雪国が異次元に存在して、彼はそこに出入りができるかのようだ。

架空の世界が現実を肉迫する。寂しくなったら、慰めがほしくなる。そんなときは彼が切り出した別の人生の一コマをまたのぞいてみたいと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年6月22日
読了日 : 2017年6月21日
本棚登録日 : 2017年6月19日

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