木に登る王:三つの中篇小説

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本棚登録 : 57
レビュー : 7
制作 : 柴田 元幸 
chibipikanohonさん アメリカ文学   読み終わった 

ガラスの壜の中の小さなミニチュアを見るように、その世界を慈しむというように読んできた大好きなミルハウザーだが、本作は、相変わらず語り口は本当に一級品だと思うけれど、残念ながら好きだとはいえない。というのは、いつもより「現代アメリカ小説」に近くて、どこか遠い世界を他人事のように見ている感じが薄いから。特に最初の「復讐」が、ちょっとレベッカ・ブラウン的というか岸本佐知子さんが翻訳する系の小説っぽくて。そして私はジェンダーの話とか男女間の関係とかを前面に押し出すタイプの話は好きではないのだ。「ドン・フアンの冒険」「木に登る王」はそれぞれ下敷きとなる古典の物語があって、どこか遠い国の物語、寓話性は強いが、それでも「復讐」を読んだ後という効果も多分にあるのだろうが、寓話の中なのにかえって人物たちの心理の揺らぎが手に取るようにわかり、人々の生々しさが匂い立つ。主人公や語り手の焦燥感がじりじりと伝わってきて、正直、重い。その「重さ」をどんよりと伝えないで、額縁に収まった絵のように語るミルハウザーの語り口はさすがで、確かに一級品の出来なのには間違いないけれど、「大切に持っておきたい」という気持ちにはなれない本だった。

レビュー投稿日
2017年8月7日
読了日
2017年8月7日
本棚登録日
2017年7月30日
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