さまよう刃 (角川文庫)

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レビュー : 1692
著者 :
3373(さざなみ)さん おすすめだ!   読み終わった 

さまようって言葉、小学生のときに初めて知って、底知れぬ恐怖を感じた。
たぶんドラクエの敵キャラの名前にそんなのがついてたんだと思う。
「迷う」は怖くなかったのに、「さ」がついただけでこの世の未知がぽっかり穴をあけて足元をすくおうとしてるような気になり、それに抗えず途方に暮れていた。
まあ、彷徨うと迷うは違うんだけど、子供心に「一文字ついただけで、めちゃくちゃ怖い」って感じた。

500ページくらいのボリューム、分厚いなぁ…何日費やすかな?なんてのんきに構えてたら、休日を丸一日使って読み切ってしまった。
時折しおりをはさみ、食事したりスマホ触ったりしてたけど、こんなに集中して読めたのは久々。

妻を亡くした男性が、宝物同然だった一人娘を未成年の犯罪で亡くし、人生を大きく狂わせ、自滅していく話。

そう!自滅なの。破滅でもいいや。
それも本人にしたら最悪の、たぶん想定外だったかたちで。
報われなさすぎる。

少年法とは?更生とは?警察とは?
多くの疑問符を投げつけてくる作品。
読んだ後は疑問符がこびりついて離れず、何度か感情を揺さぶられ泣いたことも忘れ、私はまた「さまよう」という響きで途方に暮れた。

私個人は、長峰には生きてほしかった。
カイジには死んでほしかった。
とはいえ、どんな結末でも満点にはできなかっただろう。
この手の物語には、誰しもが納得する終わり方なんてきっとないんだ。

自首をして、罪を償いながら娘の供養をするという最善の道、生き抜く大きなチャンス。
それを奪ったのが誠ではなく、警察側の密告っていうのに震えた。
途中で違和感に気づくも、最初からずっとミスリードされてた!
悔しい。

ていうか誠、最後まで腹立たしかった。
父親も最悪だ。この親にしてこの子あり、と作中に出てくるように、何となくどの加害者の親もそこそこのクズに見えた。
最たるものが誠の父親だけど。

長峰の命を奪ったのが刑法でもカイジでもなく、一介の刑事で、しかも織部というあたりにもえぐさを感じた。
彼の心境は多くの読者を共感させていたと思うから。

冒頭からクライマックス付近まで、長峰や、または彼を擁護する者の視点で語られていた。
だからこそカイジや和佳子の目前で、長峰が警察の手により射殺されるシーンは、油断したとしか言いようがない。
残りページが少なくなるにつれ、結末が読めなくなり、突然投げ出された気持ちになった。
読み終えて反芻してみても、やはりいたたまれない。

さまよう刃というのは、何なのだろうと最初からずっと考えていた。
たとえばカイジのような残酷で卑劣で、それでいて結局「子供」の化物たち。
被害者の身内の「できることなら自分の手で殺してやりたい」という気持ち。
法治国家のやるせなさにどうにか立ち向かおうとする一部の刑事であった、というのが最終的にしっくりくるんだけど、刃は刃。
信念を貫くため、守るためのものではなかったという読後の脱力感。

やっぱりゆるせないのは、更生の見込みがないクソガキとかいうレベルじゃない、胸糞悪いカイジが生き延びてしまったこと。
そして相変わらず生ぬるい少年法とかいうやつに護られてしまうであろうこと。

東野圭吾さんで言うなら「容疑者Xの献身」の結末くらい、読後の突き放され感と虚無感がキツかった。
限りなく5に近い4。他の方のレビューを拝読して何度もかみしめてみよう。

レビュー投稿日
2016年8月8日
読了日
2016年8月7日
本棚登録日
2016年7月30日
2
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