『源氏物語』男の世界

著者 :
  • 岩波書店 (1991年6月19日発売)
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感想 : 1
5

源氏物語に登場する男君へスポットをあてた源氏男君考察と言える1冊です。

これには前作があり、前作で紹介出来なかった男君が田辺聖子さんの深い考察力で描かれています。
スポットと当てられる主な男君は、薫・桐壺院・頭中・朱雀院の4人。
田辺さんは宇治十帖が好きで上下巻で大変面白く新語訳も出しておられるせいか本書の半分は薫を語る章が占めています。
私も田辺さんのお陰で世間一般の宇治十帖は助長的で面白くないと言う固定概念を打破出来ました。

「新源氏物語 霧ふかき宇治の恋」は本当に面白く何度も再読している愛蔵本のひとつですが、読めば読むほど私は薫が嫌いになりますw
宇治十帖が面白いのは大君のこうとしか生きられない哀しさ、中君のしなやかな生き方、浮船の落飾後の清々しさ、これらが読んでいて面白く再読を重ねてしまうのであって、読んでいる間中薫に「あほちゃうか、薫ほんまウザイわー」と毒づいてしまいますw

なので巻頭から長々と続く薫考もやはり「そうそう、だから薫って嫌いやねん。あー、思い出しても腹が立ってくるわー!」となってしまいましたが、田辺さんは薫の出自の複雑さから「これもしょうがないのよ。薫はこうとしか生きられないのよね」と優しく薫考を綴ります。

私は桐壺院の章で今までの私の中の桐壺院イメージが大きく良いほうへ傾きました。
桐壺の更衣に惑溺し政をおろそかにし更衣を失えば失ったでまた呆けたようになり使い物にならなくなる。
しかし我が子に妻を寝取られるコキュとなった後の桐壺院はこの星ひとつをまるごと包むほどの大きな愛情をもって源氏を赦し愛し、無くなって後も朱雀院の夢枕に立ち源氏復活の手助けをする。

本書では桐壺院のモデルを醍醐帝としているという通説から、稀代の名君であった醍醐帝・村上帝のエピソードが紹介されています。
これが面白かった!
いや古代史に通じている方には今更なエピソードばかりだとは思うのですが、私は全くの不勉強なため初めて知ることばかりで、とても面白かった!
同じく田辺聖子の「むかし・あけぼの」では花山帝の狂気ぶりがリアルに描かれていて、「天皇といっても皆が佳人というわけでもないのだなぁ」と驚きつつ読んだものでしたが、醍醐帝が余りにもすばらしい御世だったから後醍醐天皇と名をつけたこと等、なるほどなぁと面白く読みました。

前作『源氏物語』の男たち―ミスター・ゲンジの生活と意見 (講談社文庫)を早速Amazonで取り寄せて読みます!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 古典解説書
感想投稿日 : 2011年12月21日
読了日 : 2011年12月21日
本棚登録日 : 2011年12月21日

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