日本仏教の概論として、すごくまとまりのよい、行き届いた本である。内容も詰まっている。教科書として使えそうだ、という印象を受けた。ただしクセがある。「厳密な本格的な仏教を主張した人こそほとんど例外なしに、民衆に近づき、民衆の利益を増進した人たちだった」。この視点から仏教史を読み解くので、民衆への社会活動の実践にとぼしい学僧への評価は低い。
日本仏教の4類型を作っている。手短に言うと、理論と実践のどちらに重きを置くのかで分けられる。実践は行や布教だけではない。土木工事を手がけ、貧者・病人・死人の救済する実践なども含んでいる。こちらの方が仏教として重要だとも考えているようである。煩瑣な仏典研究の弊害に陥ることなく、仏教の教えが説く実践の理想的、あるいは極端なありかたを、行基、空也、一遍などに見出している。
著者は、インドの原始的、原理的な仏教の原典を研究することが専門である。その立場からみた日本仏教論なので、仏教の根本的な考え方をゆがめるような傾向には手厳しい。例えば世俗主義の徹底されすぎた浄土思想について、あるいは他宗派攻撃の激しい日蓮宗について、かなり激しく批判する。おなじ鎌倉仏教の中でも、仏教と真摯に向きあい、金や権力に対して潔癖であった道元については、高く評価している。道元は社会奉仕活動はやっていないものの。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
浄土思想
- 感想投稿日 : 2012年4月25日
- 読了日 : 2012年4月25日
- 本棚登録日 : 2012年4月25日
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