ソロモンの指環: 動物行動学入門

  • 早川書房 (2006年6月30日発売)
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本棚登録 : 451
感想 : 39
5

うわー、おもしろい!
もともと興味があった動物行動学ですが、おもしろさ倍増です。

以前、訳者の日高敏隆先生の著書の中で書名を見てから気になっていた1冊。
確か齋藤孝さんの『読書力』の中にも書名が挙がっていたような…。

動物行動学という学問をうちたてた功績でノーベル医学生理学賞を受賞したコンラート・ローレンツ博士による入門書。
研究内容の面白さに、ユーモアあふれる語り口が加わって、読者をまったく飽きさせません。

特に興味深く読んだのは「第12章 モラルと武器」。
鋭い牙などの武器を備えた狩猟動物ほど"抑制機能"を持っているのだそう。
"抑制機能"とは、同種間の喧嘩の最中に分が悪いと思ったときに兜を脱いで相手に弱点をさらすと、相手は攻撃をしたいけれどもできない状態になること。
ローレンツ博士は、これを仲間同士の虐殺を防ぐための一種のモラルだと考えています。
反対に平和の象徴であるハトはそういった抑制機能を持たないため、同種で争いが生じた際には一方的に相手を痛めつけ、時には死に到らしめる場合もあるということに驚きました。
そして最後にローレンツ博士は、その抑制を持たない動物として人間を挙げています。
大戦の時代に生き、自身も徴兵された経験を持つローレンツ博士は、同じ種族で殺し合う人間をどのような想いで見ていたのでしょう?

他にも研究に没頭するあまり、近所の人たちから「おかしな人」だと思われていたというエピソード、笑ってしまいました。
近所に動物行動学者が住んでいたらいいのにな、と思わずにはいられませんでした。

動物好きな方はぜひ一読していただきたい1冊です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: アニマル・ワンダー。
感想投稿日 : 2011年7月17日
読了日 : 2011年1月29日
本棚登録日 : 2011年1月29日

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