この悲しみの世に (講談社文庫 そ 1-16)

著者 :
  • 講談社 (1989年12月1日発売)
3.13
  • (0)
  • (2)
  • (5)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 14
感想 : 1
4

20年位前に初めて読んでから、ずっと同じ熱をもって
心の中にあった作品。
事あるごとに、色々な方にこの本を薦めてきたように思う。

しかし今回読み直してみて、20年前のような衝撃はなかった。
自分の中に蓄積されてきた経験と、小説の中の経験がある
程度イーブンになってしまった故だろうと思う。
だからこそ、主人公の女性に対して今となってはとても苛立つ。
分かるからこそ。

「恋愛」という不可思議でクレイジーで不条理な罪と喜びの
極みにあって問う、「愛」の真理という深遠なテーマには、
改めて深く引き込まれ、心に大きな手ごたえを受けた。

「この悲しみの世」
という言葉が、当時の私には重く切なく響いた。
今の私には逆に慰めと響く。

人間の哀しさ、愚かさに正面から切り込んでいる深い一作。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: book
感想投稿日 : 2009年5月23日
本棚登録日 : 2009年5月23日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする