出世街道爆進中の、エリート銀行員だったのに、あるミスで奈良県は大和郡山市に左遷され、町にも、町の人にも、町の名産の金魚すくいにも嫌悪しか感じてなかった香芝誠。ふとと招き入れられた金魚問屋で、町一番の美女吉乃さんと出逢ったことがきっかけで、金魚すくいにのめりこむことに。最後は、”金魚すくいは人生だ 一緒にすくう誰かがいて 3分間(じかん)という限りがあるから煌めくんだ 例えるならポイは”自分” 右へ行ったり左へ行ったり 擦り切れて摩耗して 破けることもあるだろう だけどそれも人生だ それでも泳ぎ続けるのが人生なんだ 不恰好でもいい あがいてもがいて骨だけになるそのときまで 生きようじゃないか"と思えるようになるなんて。「世界一静かで世界一優雅なスポーツ」と熱く語る昇。金魚のぬいぐるみをかぶって「人として当然のことをしたまでですから」と香芝がいうシーンの絶大なおかしさ。冷たくエリート然として嫌なヤツオーラ全開だった香芝が、喜怒哀楽激しくダダ漏れに、愛すべき存在に思えてきて、また作中でも愛され、目標を見出し、それがまた紙一枚で覆されても、淡々と去ろうとし、そうはさせじと熱く見送られる。身体の奥底からわくわくするストーリーだった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2021年2月23日
- 読了日 : 2021年2月21日
- 本棚登録日 : 2021年2月21日
みんなの感想をみる