「テロ事件」で語る令和。”「社会全体で考えるべき」事件こそが、テロリズムとして捉えられる事件”(p.62)という考えをベースに。川崎でバス待ちをしている人への通り魔事件、元農林水産省事務次官長男殺害事件、京都アニメーション放火殺傷事件を軸に。強く印象に残ったのはふたつ。ひとつ目は、「一人で死ね」という言葉。自暴自棄になった犯人が、関係のない人々を巻き込んで人生を終わらせるような事件が起こるたびに、複数の著名人から投げつけられた言葉。感情としてはわかるが、「一人で死ね」を突き詰めると、社会に居所がない、連帯がない、自分が価値がない、という思いが煮詰まって、結局は誰かを巻き込んで暴発するのではないかという矛盾。「あなたは一人じゃない」という恒常的なメッセージこそが必要なのではないか、という考え。ふたつめは、元次官の裁判時の"検察官は続ける。「悲しい事件であることは確かである。しかしもう少し何とか出来なかったのか」"(p.228)の他人事な、あとからならなんとでも言える的な冷血さには震える。じゃあ、お前がやってみろよ、と。
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- 感想投稿日 : 2025年3月2日
- 読了日 : 2025年2月24日
- 本棚登録日 : 2025年1月2日
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