【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛 (新潮選書)

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chokusunaさん 本・雑誌   読み終わった 

読了0605/サイクス=ピコ協定が、現在の中東の混迷の諸悪の根源、と言う言説があるが、本当か?というところから説き起こされる一冊。確かに、不十分で欺瞞に満ちたものであったが、ではその段階で他に代替案はあったのか?それを実行できるものはあったのか?現地の勢力に応じた線引きをすべきだったというが、諸民族が混在し、点在する状況では、おそらく策定に時間がかかり、策定しても自立した国家運営も難しかったはずだ、と。だからと言って免罪されるものはないが、実態を理解しつつ受け入れるしかない、と。そして、サイクス=ピコ協定単体ではなく、セーブル条約、ローザンヌ条約とセットで理解する必要があること。露土戦争と東方問題は、ソ連の成立、冷戦、トルコとソ連間の緩衝地帯とも言えるソ連の共和国、東欧の共産国家が成立し、トルコ-ロシア関係は直接の接点が激減し、過去のものとなったかに思えたが、シリア内戦を機に、解決などしておらず、ずっとくすぶっていたことが明らかになった、と。/以下備忘録的に。/現在は、依然として「強いトルコ」をどこかで恐れつつ、クルド系反政府組織との紛争や、「イスラーム国」の浸透、そしてロシアとの無謀な紛争によって、不安定化した「弱いトルコ」が出現しかねないこともまた恐れていると言えよう。/ある民族が国家の設立や自治を獲得するか否かは、自らの政府を持って統治することができるか否かは、国際情勢、特にその時々の諸大国あるいは超大国の意向、そして大国間の交渉と強調に大きく依存する。大国の承認が得られるか否かは、その民族がどれだけまとまって組織化しているか、そしてその組織に国を与えることがどれだけその当時の大国の利益にかなっているかにかかっている。/西欧にとって、アラブ諸国やトルコは、地中海の東岸や南岸で、アラブ世界やその背後のサブサハラ・アフリカ、あるいは南アジアから流れ着く移民・難民を、人権や自由の理念・原則からは疑わしい手法を用いながら、食い止めてきた「ダム」か「壁」のような存在だった。/米国とロシアのシリア内戦をめぐるケリー=ラブロフ協定。域外大国間の問題ということで、サイクス=ピコ協定と比べられるが、米露協調を軸に、シリア内戦、中東の諸問題を解決するなら、その後の中東の秩序を型作る原型となったと評価されるかもしれない。/

レビュー投稿日
2016年5月18日
読了日
2016年6月5日
本棚登録日
2016年5月18日
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