「マルサの女」日記

  • 文藝春秋 (1987年8月1日発売)
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読書室ポワロでよませてもらった原田ひ香「古本食堂 新装開店」で珊瑚さんが映画を撮りたい若者に「「マルサの女」日記」はキャスティングの話も書いてあって、それもすごくおもしろかったの。芸能界の裏話的なことも書いてあって、わくわくした。」と勧めてるのを読んで、俄然読みたくなった一冊◆心身を削って、各所に借りを作り、億単位で私財を投じ、リスクを負って苦労して映画を作り、それが幸い客に受け入れられて、ようやく手にした収入を、さも当たり前のように65%持っていく、これはおかしいんじゃないかという気持ちから「マルサの女」を制作。取られる方ではなく取る方を描くのがアイロニーだけど。税務関係者や査察に入られた方たちへの取材は綿密かつ濃厚。シナリオを読んだあとだと、あのシーンもこのセリフもここでもそこでも盛り込まれているのがよくわかる。キャスティングも、スケジュールから役者の役へのこだわりから、撮影時のイメージまで様々な事情が絡み合い、くるくると入れ替わっていく苦労。ロケハンも制作スタッフ集めも一筋縄ではいかず。これは「マルサの女2」まで撮りたくなるだろうなあとクランクイン前の状態で早くも思ってしまう。撮影が始まっても、ロケ時間、役者のスケジュール、天候などの制約を受けつつ、どういう映像になるか、演技はどうか、細かくさまざまにこだわりと妥協がせめぎ合い、観客がちょっとしたことでは気づかないことまでこだわりぬいて作られた映画であることがわかって収穫。映画もひさびさに見返したくなった。◆この映画は、日頃外国映画を見ては「同じフィルム、同じカメラでどうしてこう光も色も影も違うんだろう」と地団駄踏んだ連中が集まって、まるで勉強会のようにして作っている映画なのだp.190

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年6月23日
読了日 : 2024年6月23日
本棚登録日 : 2024年6月23日

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