ゲームの王国 下 (ハヤカワ文庫JA)

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レビュー : 5
著者 :
chokusunaさん  未設定  読み終わった 

「嘘と正典」で虜になった小川哲作品をもう少し、と思い手に取った。上巻は、カンボジアがポル・ポト支配の闇へと落ちていく過程で、田舎の村にあって聡明で風変わりな少年として育つムイタック、養父母を殺され育ての父とは国籍の違いで引き裂かれ、国のなかで高い地位を得て理想の国家を作ろうと邁進するソリヤの視点ですすめられる。ふたりは一瞬の邂逅で、ムイタックの兄ティウンも含めてゲームをし、はじめて総力を尽くして勝負のできる相手を得たと深い喜びを得るが、のちにソリヤも関わる形でムイタックの故郷ロベーブレソンの住民のほとんどが虐殺されたことで、たもとをわかつことに。「泥」と呼ばれる村民が殺し屋13人を向こうにまわして、土を武器に戦うところは、SFというより南米のマジックリアリズムのような趣を感じ。下巻はいっきに半世紀近くの時が経ち、ムイタックやソリヤの次世代の人物もあらわれ。脳波の測定から記憶の改ざんの示唆などが含まれるゲームが登場し、物語で大きな役割を果たしていく。大学教授として脳波の研究につとめるムイタック。野党の議長となり政権まであと一歩のところまできたソリヤ。事業を起こし富豪となったティウン。ムイタックの村の友人の息子とソリヤの養女が、ムイタックの研究室に入り、ゲームをつくりあげていき、そこにムイタックの研究ももりこまれ、それをソリヤが手にすることで…。究極的にはふたりとも、あの一瞬の邂逅を生涯大切に思っていて、最高の理解者とともにゲームをすることをのぞんでいた、その結果はおそらく次の世に持ち越され…と。これだけの群像劇とそう来たかという発想の飛躍、重苦しい血と統制のはびこる圧政の描写、ルールがルールとして守られる美しいゲームの王国を作ろうとしたソリヤの理想。大きなスケールと力でぐいぐいと引き込まれた。

レビュー投稿日
2020年4月19日
読了日
2020年4月16日
本棚登録日
2020年3月22日
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