十年以上ぶりの再読。音楽大学の寮で同室だったオルガン奏者のヨーゼフとヴァイオリン奏者のテオ。親友同士だったふたりだが、テオの運転する車の事故で、助手席のヨーゼフが半身不随となり、ただ日常機能を回復するためだけのリハビリに絶望したヨーゼフが失踪…十年後に、ブエノスアイレスで無名だがすごいオルガン奏者がいるという情報を聞いたテオは調べていくうちに…と。音楽を演奏したい、音楽に関わる仕事をしたいというレベルを超越して僕は「音楽になりたい」というヨーゼフ。最先端の技術とヨーゼフの音楽以外は何もいらないという意志が結びついたときに生まれたのは…と。◆どうなったかはだいたいわかっていたはずなのに、それでも聖堂に組み込まれたオルガンになったヨーゼフが「テーオー」と呼びかけ、それに応えようとするテオ、口づけでいかせまいとするマーリアというシーンでは号泣してしまった。役回りは違うけれど、映画「レナードの朝」を思い出してしまった。一度与えられた命をまた奪うことは本当に親切なのか?という問い。

2024年5月22日

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読書状況 読み終わった [2024年5月22日]
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漫画はところどころ読んでて、小説版で完結編というから最後のほうのが読めるのかと思いきや、原作者は包丁三番勝負+潮汁勝負で言いたいことは言ったから、とその部分だけノベライズされたものだった。漫画では盛り上がったかもしれないが、冷静に読むと、作中にも出てくるけど、包丁で氷像作っても、アイスクリームの天ぷらを揚げても、水の中のきゅうりを切っても、美味しい料理を作るのとは何の関係もない、曲芸。じゃあ、なんでやったのか…と。最後の塩だけ使って汁物を作れという課題も、本来塩加減が薄いはずの味平の汁に、味平の汗が入ってちょうどいい塩加減、という…バカバカしさを感じてしまった。最後、悪辣な対戦相手の渡りの料理人にすら、ここまで自分の能力を引き出せたのはあんたのおかげと手をさしのべる味平の寛容さが救いか。

2024年5月23日

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読書状況 読み終わった [2024年5月23日]

クリストファー・ドイルといえば数々のウォン・カーウァイ作品で撮影監督をつとめた人というイメージ。この写真集でも「恋する惑星」「天使の涙」から金城武、フェイ・ウォン、トニー・レオンのカットがおさめられていて、個人的にはめちゃくちゃうれしい一冊。裏表紙のフェイ・ウォンの問いかけてくるような大きなまなざしに、フェイは最後までなぜ同じシーンを何度もとりなおすのか理解してないようだった、というキャプションが添えられ。他の監督の映画からも、レスリー・チャン、カレン・モクら名だたる俳優たちのカットもおさめられ。にしても「恋する惑星」の警官役トニー・レオンの部屋がクリストファー・ドイルの部屋だったとは。どんだけおしゃれな部屋に住んでるんだ、と(そして、映画の中で水浸しにされていたような気も)。

2024年5月18日

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読書状況 読み終わった [2024年5月18日]
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シーソーブックスの店頭で、もの悲しくストレートなタイトルと、点描で描かれた本とbookstoreという星座と本屋のイラストの表紙に吸い寄せられて購入。2022年末に閉店した福屋書店新宿サブナード店で書店員として働いていた著者の閉店前後のお話。閉店を惜しむお客さんたち、年末に閉店だけど、短い間でもお正月に向けたかざりをつけ、最後まで平常運転をこころがける店員さんたち。みんな本が大好きで、真面目でやさしくて、愛すべき不器用さを抱えているいい人たちな同僚。デジタルの反対語はアナログではなく、フィジカルではないかという思い。愛する場所がなくなってしまう、愛する同僚やお客さんたちとこの場で会えなくなってしまう日々がつづられている。最後は、好きな本屋があったらどうかそこで本を買ってほしい、好きな場所があれば足を運んでほしいという願いでしめくくられて。

2024年5月20日

読書状況 読み終わった [2024年5月20日]

夏森さんの本をめぐるzine、第三弾。本を買おうかどうしようか迷ってる気持ちに"「うるせえ、俺の気持ちが買いたいと言ってんだ」と本をレジに持っていってしまえばいいのだ。"と喝を入れてくれ、”つまらない本なんて、途中で読むのをやめればいいのだ”とその時間を他の本に、他のことに使っちゃえばいいんだよと背中を押し、電車の中で本を読む姿を診てもらうことで読書に興味を持ってもらう草の根活動を意識している、というあたりが本に向かってまっすぐな感じがして好きでした。もちろん楽しいことだけではなく、周りの本屋がつぶれていく話、お店の経営のこと、お給料のことなど、大変なこともつづられてはいるが、それでも本が好き、本屋が好き、本屋で働いていく、というのが伝わってきました。

2024年5月20日

読書状況 読み終わった [2024年5月20日]

ぽやん舎さん新刊。春がだいすきな双子の姉りり、春が苦手な双子の妹ここ。力いっぱいおたがいの主張をぶつけあうが、お花見にでかけてめちゃくちゃおいしいサンドイッチをいっしょに食べてほっこりする。どこまでもあたたかくておだやかな読み心地に満ちた、まさにハルハズカム!(春が来た!)な読後感でした。

2024年5月18日

読書状況 読み終わった [2024年5月18日]

ぽやん舎さん新刊。キュートさと切なさが入り混じったぽやん舎初個展「らぶです」を観たあとだと、より味わいの増す一冊。ゆっくり見かえしてみると気になったのは「おばけだぞぅ」。おどかすように布をかぶっているはずなのに、その顔が無表情というか悲しげなのがなぜか気になる。そして「ちいさいな虹がまばたきのあいだに点滅してた」。プリズムのようになにかに反射してるのかな、なにかきらきらしたものが舞っていたのかな、と想像がふくらんで。そして、"信じたい"ではじまって"信じたい"で終わってるんだなあ、と。

2024年5月18日

読書状況 読み終わった [2024年5月18日]

今回の主人公は健太とつる駒かな。実家で周りのみんなに自分の料理を食べてもらったのがきっかけで、誰かに食べてもらうことのかけがえなさが改めて腹におち、店の賄いを任されるまで。つる駒は、舞妓から芸妓になるかやめるかの選択が間近になり、自分よりすごい同期を辞めることを知り、大先輩にも相談したけど、どちらかはまだ描かれなくても、自分なりに答えは出したように見受けられて。

2024年5月18日

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読書状況 読み終わった [2024年5月18日]
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山に図書館がないなら、図書館が山に行くべし。ジューン・カーター、図書館員として最初の日、アパラチア山脈を馬で巡る騎馬図書館員になる。騎馬図書館員という存在のことを寡聞にして知らず、このマンガで初めて知った。現代で言う移動図書館の走りとでも言おうか。一度は、大富豪の後押しでスタートした騎馬図書館も富豪の死とともに挫折したが、政府の政策変更(ニューディール政策)により復活を遂げる。大統領夫人の、騎馬図書館員たちへの、あなた方が山に住む人々へ届けているのはただの荷物ではない、本は社会に必要な知識や教養であり、困難な人生への助けになり励ましにもなっている、彼らが受け取るのは希望という宝物です、というスピーチには胸を打たれる。そしてジューンが騎馬図書館員としてめぐっていた中で出会ったネイサンと、ジューンが老年になってから、移動図書館をしているネイサンに再会するシーンにも。

2024年5月6日

読書状況 読み終わった [2024年5月6日]
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「冬期限定ボンボンショコラ」読了を契機に上下巻再読。冬期限定〜読む前の時点で、小鳩くんと小佐内さんは別れてたと思ったけど、春期限定でお互いの小市民から踏み出しそうになるのを踏みとどまり、夏期限定でお互いの小市民性をかなぐり捨てて別れ、秋期限定でお互いに別の相手ができて、放火事件で駆けずり回ってうちに別の相手と別れ、回りくどいけど私たち一緒にいましょうよ、というのがおおまかな見取り図。それぞれ「断る理由がなかったから」、「わたし、知りたかったの。恋とはどんなものかしらって」から始まった恋は、「あたしもそうだけど、きみも最低だった」および「この子他愛ないなって」思いで終わりを迎え。小鳩くんと小佐内さんの、やはり他の相手では物足りないという点では共通点をみて、きっと多くの同級生からしたらひどく感じが悪く傲慢に見えるであろうことも、かえってふたりをつなぎとめて…という状態で冬期限定につきすすんでいったんだな、というのをあらためて認識できた。

2024年5月7日

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「冬期限定ボンボンショコラ事件」読了を契機に再読。私のこの夏の運命を左右する「小佐内スイーツセレクション・夏」。おだやかなスイーツめぐりの夏休みとなるはずが、不穏な事件が起きて小佐内さんが連れ去られ、小鳩くんがそれを追うことに。見事解決した暁に暴き出されたのは、その計画の真の首謀者。「犯罪は、お菓子じゃないよ、小佐内さん」。復讐の甘美さに身をゆだね、自分を害そうとするものに冤罪をかぶせようと自らの身を守るためには必要という考えと、徹頭徹尾利用されたことはまだよしとしても、冤罪を生み出すのはやりすぎという意見がぶつかり、ふたりは互恵関係を解消することにという苦い結末に。

2024年5月6日

読書状況 読み終わった [2024年5月6日]
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じゃれあう二匹の子猫の写真をいつまでも眺めてられる

2024年5月11日

読書状況 読み終わった [2024年5月11日]

アヤソフィア、スレイマニエ、地下宮殿、トプカプサライ、エジプシャンバザール、グランドバザール、そして街並みなどなどたっぷり写されていて堪能

2024年5月11日

読書状況 読み終わった [2024年5月11日]

前の読書会で、マッチングアプリに詳しい人に話を聞かせてもらったきっかけで手にとった一冊。察してほしいばかりだった主人公が、ちゃんと自分のしたいこと、自分の気持ちを告げられるようになり、やりたいことも見つけられたところは成長していて、出会いの紆余曲折はありつつも、後味はさわやかな小説でした。途中、こんなに違う人に会ってきたのに元に戻って終了?と思いきやそうはさせず。だからこそ、最後の一文が聞いてくるのかなあ、と。最初のページの子どもの本ばかり…は、こういう理由だろうな、というのが気持ちよく裏切られて。それにしても地雷の人、何がしたかったのか。わざわざ写真とプロフィール見ていいねして会うことにしてまで、悪態つきたかったのかな?◆ただ、現実に引き寄せちゃうと、出会いがないなら試行回数を増やせばいいってアドバイスあるけれど、打席に立ち続けるのもそれはまたしんどいよね、という思いも。

2024年5月11日

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読書状況 読み終わった [2024年5月11日]
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シリーズ最新作「冬期限定ボンボンショコラ事件」読了をきっかけに20年ぶりの再読。なぜだか健吾が牛乳パックをあっためたのだけ覚えてた。そして、確かに、ここには、小鳩くんと小佐内さんが、なぜ小市民たろうとしたのか、具体的な事件は描かれてない、ふたりがどうやって中学校時代に出会ったのかも、と思いつつ読みすすめた。小市民たろう、小市民であれ、と願って行動もしてきたけど、どうにも復讐したい欲、知恵働きしたい欲をおさえきれないシーンもあったふたり。また健吾の、あのときのお前はどこにいった、小市民の頼みなんて聞きたくない、というのも後押ししていて、と。「中学時代の三大失敗」、ボンボンショコラのとは別にもうふたつあったのだろうか。夏期限定、秋期限定と再読をすすめれば思い出すだろうか。

2024年5月4日

読書状況 読み終わった [2024年5月4日]
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ホストの客秘話編からの、アポ電強盗編へ。加藤が以前気にかけてたかつての中学生が捜査線上にあがり…。あっち側とこっち側が容易に繋がっていること。同じテーマのラップでも、うまく行くはずだったのに派とうまくいかないのがデフォルト派があって、と。磯部涼「ルポ川崎」読んだ時のこと思い出した。

2024年5月5日

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読書状況 読み終わった [2024年5月5日]
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椋橋彩香「タイの地獄寺」読了後、もっと図版を見たくなり手に取る。図版豊富。キャプションなしに大量に図版を見たい身にはありがたかった。地獄表現以外の図版もあり。大量に地獄表現見てるとちょっとウッとなってくることも。一番受けたくない責苦は、木から吊るされて、カラスに男性器ついばまれるやつですね。

2024年5月5日

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読書状況 読み終わった [2024年5月5日]

黛敏郎といえば「涅槃交響曲」「曼荼羅交響曲」が代表作だろうえけど、個人的には「ミュージック・コンクレートのためのX.Y.Z.」の作曲家。この本の内容としては、早熟の天才作曲家、多彩な作曲活動、作曲にとどまらない活躍、といったところか。年表的時系列、作品の簡易紹介、交友エピソードを知るにはよい。ただそれらが羅列され、有機的には繋がってない感あり。武満徹に、もっと真剣に作曲を、と問われて、黛がそんなこと言っても君の名前は「タケミツ」だろなんてはぐらかし、載せる必要あったのかな(真剣と竹光をかけたんだろうけど)。◆芸大に現れた伊福部昭、颯爽として鮮烈だったなあ。◆黛作品としては、スフェノグラム、7のヴァリエーション、理髪師の衒学的欲望とフットボールの食欲の相関関係、3つの讃、MI・YO・TA、ボクシング、オーケストラと合唱とオンド・マルトノによる「祝婚歌」、あたりは俄然聞きたくなってきた。

2024年5月8日

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読書状況 読み終わった [2024年5月8日]
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まちまちに並行して走る、バイオグラフィーや事件、エピソード、団体などが、最終ページに向けて、からまりあい、関係しあい、また離れ、去り、死に絶え、生き延びといった様を、蜘蛛の巣をめぐらすように、感じられた一冊。読んでいくとどんどんつながっていく感があるのよね。「インターネットが細切れにした文脈を再構築しなおすこと」も意図のひとつのようなので。読んでてぐっと引き込まれて時間が飛ぶような感覚もあって、確かに陰謀論ってその中にすっぽり入ってしまえば知的興奮のようなものが得られるんだろうなあ、という一端を垣間見た思い。◆ロバート・アントン・ウィルソン、ティモシー・リアリー、アビー・ホフマン…斯界では著名なのかもしれないけれど、普段ふれない身には初耳。最初は冗談から、あるいは権力への対抗からはじめたパロディ宗教や組織が、現実に何らかの作用をあたえて、最後は発案者たちを飲み込んでいくケースには旋律。豚をアメリカ大統領候補にかつぎあげるなんて、ものすごい皮肉だけど、その手法は時代だなあ、とも感じたり。いまでは考えられない一般市民への人体実験的な試みがあったというのも然り。◆◆「何も真実でない。すべて許されている」p.09◆(「チベット死者の書」)本を開くとこの前の(シロシビンを服用した)土曜の晩に体験したことがそのまま説明されていたんだ!p.16◆問題は、「謎の組織が暗躍している」という荒唐無稽で蠱惑的な説と同じくらいに、「そんなものは存在しない」という真っ当な「説」を信じてやれるかどうかだ。陰謀の中に見たひとつの「現実」と同じくらいに、いま目に見えている、ありていな、あなたの「現実」を愛してやれるかどうかだp.149

2024年4月29日

読書状況 読み終わった [2024年4月29日]

出羽の戦国武将安藤愛季が主人公。戦国の世に、領土拡張ではなく、平和を愛し、領民を富ませるために奮闘した君主がいた、という現代の価値観を投影した戦国武将像は食傷というか無理があるのではないかと思っているのだけど、それを差し引いてもなかなかに読み応えある魅力的な人物像だった。家督相続時に1.5万石だった領土を実高15万石ほどまでに押し上げ。その間、内治に篤い家臣を呼び寄せ、港を整備し、水運を、貿易をさかんにし、鉄砲をはじめ軍備を増強、寺社興隆、分家を掌握し、織田信長、豊臣秀吉といった中央の権力者とも好を通じ、と。全般的に、北は津軽、南は庄内と、戦った地は限られたものだったが、蝦夷から敦賀、京都まで、その視線は広く向けられていた、と。個人的には、浪岡御所、蠣崎家とのやりとりにも着目。史実の愛季・実季親子にもふれたくなってきた。

2024年5月15日

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読書状況 読み終わった [2024年5月15日]

前作があまりによかったので二作目も。この巻は◆大晦日にベンチで、なんにもできない一年だった…と嘆く女性に、ミニスナックゴールドをそっと差し出すネコ。スーパーの特売で買ったベーコン全部使われたけれどうまい…とつぶやきつつ、吉村がベーコンのっけごはんを作ってくれたことに感涙する魔王。屋台でメロンボールシャーベットをくばる黒いの。吉村家からバスで20分のところにあることが判明した魔界。◆といったあたりがツボでした。

2024年4月29日

読書状況 読み終わった [2024年4月29日]
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まずは、タイトルにからめて「花束みたいな恋をした」の話。骨子は、長時間労働だからじゃないの?いや、昔から日本は長時間労働だった。じゃあ、なぜ?そこから明治以来の労働史、読書史が語られ、全身全霊を仕事につぎ込むことを要請される現代の働き方が指摘され、重要なポイントでは必ず「花束みたいな恋をした」が振り返られ、最後に、半身で働く社会をめざしませんか?という訴えかけるところでfin。◆個人としては…自分、読めてるほうなのかもと思った。ただ、もっともっと読みたい欲はある。あまり一般的じゃないかもしれないけれど、教養を求めてというよりも、読書という行為自体が楽しい。体系的な教養にならなくても、仕事の糧にならなくても、四方八方に発散して疾走していく個人的な興味を満たすために、今日も活字を摂取しつづけているのだから。誰に頼まれたわけでもなく。◆ただ、そうはいいつつも「働きながら本が読めなくなるくらい、全身全霊で働きたくなってしまう」ように個人が仕向けられているのが、現代社会なのだp.246/全身、コミットメントしてほしい。---それが資本主義社会の、果てしない欲望なのだ。p.255あたりは、体感として納得。だからこそ、末尾近くの、"半身社会とは、複雑で、面倒で、しかし誰もバーンアウトせずに、誰もドロップアウトせずに済む社会のことである。まだ絵空事だが、私はあなたと、そういう社会を一歩ずつ、つくっていきたい。"p.266には脳天唐竹割りされた感と、強い共感とを感じた。

2024年4月25日

読書状況 読み終わった [2024年4月25日]
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何度か会ったことのある夏葉社島田さんのもとへ、編集の仕事につきたいけどうまくいかなくて、夏葉社に遊びに行かせてください、仕事ぶり見させてください、できればなにか手伝わせてください、という秋さんに、島田さんが週一度うちでバイトしませんか?というところから始まるストーリー。エッセイなんだけどはじめから終わりまで秋さんの物語を読んでいるかのような。◆昼食は近くのそば屋で昼食代は島田さん持ち、夏葉社持ちで月に一万円まで本を買ってください、そしてごはんのあとは読書のための時間があるなんて、本好きの身からすると夢のような待遇では?◆島田さんの仕事ぶりにふれ、その言葉に触れ、それを書き記していく秋さんの筆致がまたいい。◆「キラーフレーズを伝えるために本をつくるんじゃないんです」p.65◆ぼくは自分の外に基準を求めてばかりで、自分なりのこたえを持っていなかったのだp.69◆「秋さんが楽しいということは、島田さんも楽しいということですよ」p.119◆島田さんは本や小説の力を信じている。それは作品そのものの力というより、その本を読むことで読者が得られる、生きていくための粘り強さみたいなもののことだ。◆といったあたりがよかった。そして、◆本をつくるのであれば、「読者のために」から離れてはならない。いつだってその目的に立ち返る。迷ったり焦ったりしても、かならず振り返る。島田さんはそれを「果敢に保留すること」といっていた。カッコいい響きである。「なんとかなる、と考えるのはいつでもできます。それまでに最悪のことを考えて、できるだけ努力することだと思います。ぼくはその過程が大事だと思っています」p.180の一説には本当にぐっと来た。◆最後は、一年間受け取ったものを胸に、編集者になって、という筋立てかと思いきや、あとがきではコールセンターのバイトをしていて、燃焼しきれてない、って書かれてたけど、この本自体が秋さんが起こしたひとり出版社から出版されていて、それこそが一番島田さんの薫陶をストレートに受けた結果なのではという思いを抱いた。◆あと、びっくりすることが書かれているという島田潤一郎「あしたから出版社」文庫版あとがきと、秋さんへのアンサーソングともいえることが書かれているという島田潤一郎「長い読書」、どちらも読まねばの思いを強くする。

2024年4月21日

読書状況 読み終わった [2024年4月21日]

先生と助手、一般的な倫理観からするとぶっ壊れてる先生、ミニミニ核実験、人の心にだけ作用する爆弾、記憶を操るガム、人工的に作ったアリなどなど。助手のことを心配して頼りにしてるようで、初手は冷徹に思える、それを危ういなと思いつつ淡々と受け入れてる助手の関係もまたよき。

2024年4月27日

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読書状況 読み終わった [2024年4月27日]
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