読書室ポワロで読んだ中江有里「万葉と沙羅」の影響が自分の中に色濃く残り、夜分に唐突に無性によみたくなり居ても立ってもいられず福永武彦「廃市」目当てでKindle購入。◆おそらく柳川をモデルにした風情あふれる水郷。
けれどそこは退廃に満ちた時の止まったと住む人も自嘲する街だった。そこへ一夏の勉強場所として宿を借りた青年が出会う人々。綺麗には結べない、いびつな五角関係が描かれる。見ないようにしてたのか蓋をしていたのか、最後の最後に自分の気持ちに気づくだなんて。◆他の短編、「未来都市」はまだ読めたが、「飛ぶ男」「夜の寂しい男」など何篇かはまったく肌にあわず、すべて読むこと能わず。

2024年4月22日

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読書状況 読み終わった [2024年4月22日]
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円錐書店で購入。「旅粒 4」を持っていたので、見かけて思わず手に取る。一番の決めては根室の写真かな。巻頭の焼き物の人の話もなかなかにぶっとんでてよかった。上海、根室、釧路、白老、札幌など、移住してきたアーティストの人にインタビューした記事も読み応えありでした。飛生芸術祭を企画した人の話とかはとくに。

2024年4月21日

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読書状況 読み終わった [2024年4月21日]
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「読書会という幸福」つながりで。そこで、事前に優柔不断と読んではいたが聞きしに勝る優柔不断、アドルフ。伯爵の愛人に熱烈にせまるも、ついに関係を結ぶが、あっという間に熱は覚めてしまい、なのに別れられない。周囲からどんだけ言われても、逆に意固地になり、別れると決意する、果たせず、心にもなく愛してるとつげてしまう、以下ループという道行きは最後には…と。三島由紀夫は再読三読に耐える小説といえば「アドルフ」と言ったそうだが、今はその気にはなれないぐったりとした読後感。解説の"『アドルフ』はたしかに小さな物語だ。延々ぐずぐずとして、最初から最後まで正解らしい正解のでてこない、なるほど「性質のパッとしない」小説だ。しかし、その小ささに、そのぐずぐずさに、その正解のなさに、その「性質のパッとしな」さに、読むものは身につまされる思いをするのである。"という一節に頭をたれる。◆存在するものはなんであれ、おのずと伝わってしまうものなのだ。◆消えかけた愛情を搔きたてようとしたところで、義務感からなされた決意などに、なにができるだろう?◆ずるずると長引く恋愛関係には、それほど根深いなにかがある! そうした関係は、気づかぬうちに、われわれの生活の深部になってしまう。◆わたしは自由だ。わたしはもう誰かの愛しいひとではなかった。世界じゅうの誰にとっても異邦人だった。

2024年4月17日

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読書状況 読み終わった [2024年4月17日]

円錐書店にて購入。小説版微熱少年に絡むのかな、と思ってたけどそれはぜんぜんなかった。執筆当時の昨今の歌謡曲、歌詞、歌手のこと、アメリカへの旅、アメリカへの想い、ソウルミュージックへの愛とレビューといったところか。カーティス・メイフィールド、一曲しか聴いたことなかったけどもっと聴いてみたくなった。

2024年4月19日

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いよいよ函館から平取の手前まで、アイヌに触れ、アイヌ文化を知るために向かう平取までの旅路。その旅程で、産地と異人たちを結んで商売をする異人仲買のお由と知り合い、伊藤の気持ちが傾くのを目の当たりにする。伊藤が差別されしいたげられてきたことが語られ、その伊藤をもってしても、アイヌを差別することはやめられない様が描かれ。もっとも、伊藤にフラットな目でみてほしいと思うバードも、バックには大英帝国という権威を背負っていて、大英帝国といえば…といったことまでは語られない。平取の酋長の、あなたがたは突然押し寄せてきて一方的に法をまもれという、こちらは和人の言葉も文化も学んだのに、なぜあなたがたはアイヌを知ろうとしないのか、という静かな説諭が響く。

2024年4月15日

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金の皇帝が亡くなって…と思ったら三年経ってた。アイラにとって叔父にあたるウキマイが即位、アイラの兄たちは遼の残党を掃討、アイラは宋と金との架け橋になろうと康王との関係を深め、康王もそれに応え…と。凛之の元婚約者が急に凛之たちに接近、遼の割符を持つという男のアイラへの接近、ときな臭い動きは続くが…と。フィクションではあるが宋人の金人への態度とか考えとかこんな感じだったのかなあ、と感じたり。徽宗が腕をふるってきたとされる書画は、現在のこっているものは徽宗が統括して花押を押しただけで、画院のメンバーがつくったもの、いや皇帝本人によるもの、と諸説あるのだとか。

2024年4月16日

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亡き母アイの役を演じるためにもがき苦しむルビー。B小町の元メンバーと話したり(アイへの錯綜する思いはYOASOBI「アイドル」そのもの)、有馬かなが意識してヒールとして振る舞いルビーの感情をかきまわし、そこから…といった巻か。それとあわせて、アイのアイドルになるきっかけ、アイドル時代が語られ。ちらほらとでてくるカミキヒカルの存在感が不気味。

2024年4月18日

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読書室ポワロにて。離婚を申し出られた沙也加が、夫の行きつけの定食屋「雑」で働き始め、ぶっきらぼうなぞうさんに最初は戸惑うが、メニューの提案をしたり、お客とうちとけたり、新しいメニューや調味料を提案したり、離婚の相談をしたりで、いつしか打ち解け、戦友のようになり。語り手は沙也加、ぞうさん、常連客の高津と入れ替わり立ち替わりで。30代、70代女性の連帯がうまれ、お店も順調にいって、といったfinかと思いきや、最後の章でいきなりパンデミックの現実が入り込んできてちょっとおどろき、と。ただ、ストーリーの開始時点から、ぞうさんも沙也加もいい方向に変わっていった、本人たちもそれを自覚している、という感じがすごくよかった。最後の方の「もしかして、次は私がぞうさんって呼ばれるんでしょうか?」という沙也加のセリフからはじまるやりとり、すごく好きでした。◆名前を呼べたのはわかったからだ。彼女がやめても悲しくない、と。彼女がやめるとしたら、それは彼女の側の理由でこちらが悪いわけじゃない。だから責任を感じる必要もないのだ。この子はそういうちゃんとした大人なのだ、と。◆あんた、すぐにさびしいって言って、人をさらっと誘えるだろ?そういう人間は一人にはならないよ◆「一つも売れなかったら、どうしようかねえ」「それでも、売るんです。売れるまでやるんです」

2024年4月13日

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読書状況 読み終わった [2024年4月13日]

坂本龍一関連の著作や雑誌の特集を何冊も読んでいくと、よく語られているが現物は見たことのなかった一冊、思い焦がれてた一冊を円錐書店にて入手。未刊行図書目録の名の通り、既刊の本、あるいはあったらいいなの空想の本を、斬新な装丁で刊行したらどうなるかなという空想図会。モノとしての本をとことん突き詰めた、呪術的、物神的な作品がたくさん見られたの眼福。一定時間経つと燃え始める本、知りたいと知らせてなるものかのせめぎあい。鉄製の表紙、錆止めは塗らず、読むたびに赤くなる手、開くたびに音が鳴る。すべてタンパク質でできていて、読むたびに分解していき、一年後には消失。遊び心に満ち溢れていて楽しい。安西水丸さん想定シリーズはどれをとっても、ああ水丸さんだなあという趣にあふれ、特にジョン・ケージ「きのこ図鑑」が極北だと思った。何度も見てしまう。浅田彰-坂本龍一対談では、線的な受容しか許さないカセット、レコード、ビデオテープの窮屈さが語られ、ランダムアクセスできる本の優位性が語られる(何度もランダムに読んだり、索引使って該当箇所だけ読んでくうちにファミリアになるという浅田彰)。ただ両名がここで語った音楽と映像のありうべき、求める受容の仕方は、四十年後ほぼかなっているなあという実感。そういう意味では先見の明があったんだろうな。

2024年4月13日

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やりきった感のある自主制作映画と上映会、ともだちとのドライブ、キャッチボールしながら話す本音、ともだちが取った大きな賞、ともだちの個展、役者つづけないんですか?という問いかけ。故郷に帰る友。うらやましくてすねた自分の気持ちにも正直で、楽しいときがずっと続くと思ってたのにそうはいかないと悟ったときの思いだったり。ああ、青春だなあ、と。

2024年4月11日

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読書状況 読み終わった [2024年4月11日]
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アンナ自身も、周囲も、家族が増えたり、亡くなったり。また皇帝たる父のまわりで、政治や軍事を語り、女性の地位向上をはかり、ついには戦場にも同行し。しかし、姉弟関係は悪化の一方で、ついには公衆の面前で姉へ異端の疑いをかけることで決定的に。史実だからどうなるかはわかっているのだけれど、それでも目がはなせない、まだ息のある父から印章を奪い、即位した弟をぜったいに潰すと誓ったアンナの行く先を。

2024年4月11日

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疲れた人にそっと夜食を届けてくれるクマ、シャケ、猫、ゴリラなどなど。ときには朝食も。疲れた心と身体にほっと。クマがシナモンロール売ってた、猫がシチューを売ってた、ゴリラがチョコバナナスコーン売ってたでもりあがる職場、まざりたい。黒いふわふわが、そっと届けたおにぎりが食べてもらえなくて泣きそうになり…でも最後は…のところでこっちが泣きそうになった。北海道チーズ蒸しケーキに焼き+バター!すごくやりたい!。途中、夜食を届けるほうのクマさんがうつっぽくなって、動けなくなって、けど最後はもどってきて、また笑って働けるようになったのすごくほっこりしました。あと、魔王がいい人すぎて泣きそう。

2024年4月10日

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まさか続編が出るとは。老いたルシウスが主人公。しっかりものの息子はいるが、妻さつきは行方不明中。浴場技師としてのプライドを持ちすぎて、仕事を断ってばかりだったが、アントニウス・ピウス帝の命令で、各地の浴場を整備し評価されていく。そのヒントはもちろん!温泉で溺れて、現代日本の温泉にワープすることで得られる!と。箱蒸し風呂に入ったピウス帝が、傍目には死んだのかと思われるくらい寛ぎきってる絵が最高でした。

2024年4月8日

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救いようのない話だった。◆生活保護の不正受給者へ厳しいまなざしを向けているようでいて、嶺本の「諸外国はどこも生活保護制度があるし、そういうセーフティネットがあるからこそ民主主義が成り立つんだ。」に始まる一節、金井の「世間は、『生活保護を貰ってる奴らは、楽して金を得てずるい』ではなく、『一生懸命働いてるのに生活保護世帯よりも安い賃金しか貰えない社会はおかしい』と考えるべきなんだ」と語らせたことには一理あるし、耳を傾けるべきなのだと思った。◆腹が立ったのは、巻き込んだ張本人たちが、俺と/私とかかわったのが運の尽き、運命だと思ってあきらめな、と言ってるところ。巻き込まれた方からしたら、ふざけるな、だと思う。◆自分とは縁のない、遠いところの話と捉える人が大半かもしれない。けれど、「板子一枚下は地獄」を地で行くように、この世界で生きていくということは、ちょっとしたきっかけでそうなってしまう可能性もあるということを考えさせる、ヒヤリとした読書体験でもあった。◆きっと踏みとどまるチャンスはいくつもあった。気づいていながら気づかないふりをして流れに身を任せた結果が今ここにある。闘わず、抗わず、ひたすら目を瞑っていた結末がこの光景だ。(p.340)

2024年4月6日

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読書状況 読み終わった [2024年4月6日]

奈倉有里「ことばの白地図」を読んだのをきっかけに再読。こんなにも文学と語学に首までつかって、その滋味を味わえる歓びが読む身にも伝わってきて。個人的には、学生時代のゼミの予習のために、これでもかとトルコ語、ペルシア語、オスマン語の辞書を引いた日々のことが重ね合わされて。そして、学ぶこと、考えることを突き詰めた先のアントーノフ先生との関係も手に汗にぎり。前回読んだときは、この本に出てくるトルストイ『クロイツェル・ソナタ』をむさぼるように読んだことを思い出し。◆そして言葉が心を超えないことを証明してしまうような瞬間が人生のどこかにあるからこそ、人はどうしてその瞬間が生まれたのかを少しでも伝えるために、長い長い叙述を、本を、作り出してきたのだ。(p.206)◆だって、私はひとりではなかった。そしてこの先もずっと、永久にひとりになることはない。いつのまにか、かつての自分といまの自分はまったくの別人というくらい、私の内面は変わっていた。私を変えた人はこれからもずっと、私を構成する最も重要な要素であり続けるだろう。(p.208)といったあたりが深く響き。チャーミングだなと思ったのは「つまりは聞き分けのいい犬のようなもので、聞けばだいたいなんでもわかるのに、うまく言葉が出てこないのである。ガウ。」という一節。

2024年4月5日

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読書状況 読み終わった [2024年4月5日]
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完結巻。素知らぬふりで琥珀とイズコ探しを続けるユートだったが、エレベーターで乗り合わせた女性から自分のマンションがむかしイズコだったと知った喜びから、琥珀にもすでに知っていたことを隠していたことが伝わってしまい、突然の関係断絶。…まさかそこから大学卒業まで飛ぶとは思わなかった。大人になったユートが歩み寄り、二人の間でもっと話しあえばよかったね、お互いの存在がどれだけ心強いものだったか計り知れなかったのにね、と。最後の琥珀の一言がこれからの二人の関係を示唆しつつのfin.

2024年4月7日

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読書状況 読み終わった [2024年4月7日]
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文庫版入手を機に再読。◆父の来歴を語りつつ、ほんのちょっとした偶然が重なって自分が産み落とされてここにいること、雨粒の一つ一つのように固有ではあるけれどかわりのきく存在であること、しかし一滴の雨水なりの思いがあることを噛み締めるところが今回は記憶にとどまる。

2024年4月5日

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読書状況 読み終わった [2024年4月5日]
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パラリとめくってみて、アナーキーな感じに惹かれて購入。街を歩くだけで、路上を徒歩で踏み締めるだけで、その空間に何らかの楔を打ち込むような試み、思想に興味がひかれて。◆時間を気にせず路上空間を歩くこと、それが街を生きる根本的な要素のひとつなのではないかと思う(p.5)という宣言からはじまり。◆東京から愛知を二週間で歩いた記録。◆パプアニューギニアのポートモレスビー(警備会社業界が一番儲かってて、影響力があり、それゆえに治安が良いのは困るという、人々にとって暮らしにくい状況)、オーストラリアのキャサリン(アボリジナルの青年たちとの交流)、キルギスのビシュケク(「今のタリンにはこんな建物はもうないわ。だけどこの街は当時の建物ばかり。昔にタイムスリップしたような気持ちになって、少し変な感じがする。」)といった旅路で得られたことば。◆「人間存在とは大地である。歩き、感じ、考え、そして愛をいだく大地である。アタウワルパ・ユパンキ」p,19◆自らの身体を凹凸をともなった地面に見立てて、その上を歩き回るアリへの思い◆正しいとしてもそれはしょせん道徳的な正しさにすぎない。上から押し付けられる「正しさ」に抗い、世の趨勢に積極的に「迷惑」をかけることによって、私たちの歴史は動いてきた。p.63◆個人的な側面は強いけど、巻末近くの免許取得と韓国語学習を重ねるおもしろい論考。◆仲小路に作品の具材を配置して写真をとってまた去るアーティスト◆といったあたりが気になった。

2024年4月2日

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読書状況 読み終わった [2024年4月2日]

今回は、漱石が、そしてかつてあった鎌倉文庫という文豪たちが蔵書を出し合ってはじめた貸本屋が、大きなテーマに。「坊っちゃん」と「明暗」、読みたくなっちゃうなあ。最初は、鎌倉文庫をきっかけに扉子が親友の圭と仲違い、次に扉子の母方の祖父と祖母の鎌倉文庫をきっかけとしたなれそめ、最後は若き栞子が鎌倉文庫の謎を解く、といった組み立てで。花子の来歴と、なぜ文学を深く愛し、文学に裏切られた思いで離れ、また今文学に親しむのかの道行きすべてが胸に迫ってくる。そして漱石への複雑な思いも。◆登場人物のモデルにされたせいもあって、漱石の妻は悪妻呼ばわりされているけれど、彼女の欠点が注目されているほどには、一時期の漱石が妻子に振るっていた暴力は注目されない。あなた、実に不公平な話だと思わない?(p.270)◆本も、人間も、完全な存在ではなくて…人間が書いたものだから、本にも欠点はあります…最後は、欠点を許せなくても受け入れられるか…欠点や問題があったとしても、愛せるかどうかで、決まる気がするんですp.274(栞子から花子)◆「みんな金が欲しいのだ」「さうして金より外には何も欲しくないのだ」(「道草」)p.126

2024年4月7日

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読書状況 読み終わった [2024年4月7日]
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「書記バートルビー」のみ読了。結局、なんだったんだよ、バートルビー!弁護士事務所で、最初は筆写だけはまじめにこなしていたバートルビー。しかし他の仕事を頼もうとすると「わたくしはしない方がいいと思います」と断わり。そのうち筆者もしなくなり。ただ立ち尽くすだけに。何度も注意し、ついには解雇しても立ち去らず、事務所ごと移転した雇い主。しかし、バートルビーはその建物に居続けて、最後は…と。意味ありげな「あなたはその理由をご自分でおわかりにならないのですか」。解説の「まさしくメルヴィルは「金」を「神」以上に崇拝するキリスト教社会、そしてその社会の奴隷となっている人間の悲喜劇を描きながら、「一般善良な」人物を介して、読者にも真実の生き方を考えるように、答えを迫っているのである」にも納得いかず。

2024年4月8日

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読書状況 読み終わった [2024年4月8日]

還暦手前の元がん患者で独り身のネイサン。ブルックリンに腰をおちつけたと思いきや、若い女性に恋して、自分のせいで二度とあえなくなり、疎遠だった甥トムと再開し意気投合、トムの雇い主古本店主ハリーとも意気投合、姪の子がわけもいわず飛び込んでくれば保護し、娘のレイチェルとは関係を再構築、トムがひそかに惚れてるBPMを見かければ声をかけ仲良くなり、保険調査員時代のつてをたどって姪を狂信的な夫のもとから救い出し、ハリー亡き後は義憤にかられて復讐し、トムの新しいパートナーとの出会いにひと肌ぬいで、自分はBPMの母親のパートナーとなり…と八面六臂の大活躍、とにかく元気だなあ。そして読んでて元気になる一冊。ユーモアと自虐と自負をおりまぜながら駆け抜けるネイサン。またp.409のネイサンのプロポーズを断ってからのジョイスの啖呵が気風がよくって最高でした。◆生きている人間ならみな、突拍子もないことを話して楽しくないはずがない。p.265

2024年4月15日

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読書状況 読み終わった [2024年4月15日]
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著者が読書にのめり込んだきっかけが冷たい家庭にあった、というバックグラウンドはハード。読書会が救いになったことが手に取るようにわかる。途中、読書会の話、というよりわたしと文学みたいな話になって、タイトルに比して…と思ったがそこも含めて味わい深い。おかげでコンスタン「アドルフ」読んでしまいした。また翻訳家だらけの読書会、密度濃いだろうなあと思いを馳せる。課題本があるタイプもないタイプも、どちらの読書会にも通う身としては、なぜ自分が読書会に足繁く通うのか、なにが自分をひきつけるのか、本をはさんで誰かと語り合いたいのだ、という思いをこれほどまでの深く、バラエティに富んだ表現で提示してくれて、まさに幸福な読書だった。◆課題本を読むタイプの読書会を楽しむ作法、①できるだけ欠席しない②課題本は必ず読み終える③ほかの人の意見を否定しない④課題本をリスペクトする⑤ひとりで喋りすぎない⑥雑談をしすぎない、と。なるほど。◆ときおり、これは自分のためだけに書かれたのではないかと思う本に出会うことがある。そんなとき、人は胸の奥にしまっていた経験を語らずにはいられなくなるものだp.viii◆本について語りながら、実のところわたしたち自身の人生を語り合ってきたのではないかと思うp.ix◆一冊の本をだれかと分かち合い、感動を共有したいというこの気持ちこそ、まさに読書会の神髄ではないか。p.131◆「テヘランで〜」の著者は言う。「どんなことがあっても、フィクションを現実の複製と見なすようなまねをして、フィクションを貶めてはならない。私たちがフィクションの中に求めるのは、現実ではなくむしろ真実があらわになる瞬間である」p.221-222

2024年4月15日

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読書状況 読み終わった [2024年4月15日]
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「別冊 音楽と人 櫻井敦司」で櫻井敦司が読んでたので気になって。何度か読んだ気がするが、今回気になったのは以下のところかな。◆我々は自発的にはずいぶん馬鹿げたものを拝み、ただそれを意識しないというだけのことだ。◆まったく美しいものを美しいままで終わらせたいなどと希うことは小さな人情で◆生きよ堕ちよ、その正当な手順の外に、真に人間を救い得る便利な近道が有りうるだろうか。◆人間は生き、人間は堕ちる。そのこと以外の中に人間を救う便利な近道はない。

2024年4月2日

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読書状況 読み終わった [2024年4月2日]
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フィンランドで寿司職人!という夢を見つけたチカさんが、仕事で使えるくらいの英語を身につけるまでの道のり。勉強楽しくない!という自覚からスタートしたけど、出会ったオンライン英会話レッスンの日本人女性メンターが素晴らしかった!(マンガでは猫の姿)。道のりの長さにへこたれそうなチカさんに、薄い文法書を1ヶ月でやり切ることをすすめ、目標は具体的であればあるほどいいとはげまし、ディクテーションの教材を渡し、「簡単でいいのでチカさんが知っている言葉を使ってください。大切なのは、正確さよりも流暢さです。」とアドバイス。英語での模擬面接までこぎつけさせる道のり、わくわくしました。あと、ジャパングリッシュ大好きな同僚たち—-ブラッドピット、レットイットビー、マクドナルド。AIに英文メール書く補助をしてもらうあたりが印象に残りました。

2024年4月2日

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読書状況 読み終わった [2024年4月2日]
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