ヴラヂーミル·ペドローヴィッチの16歳の頃の恋とその顛末を描いた物語。
恋の相手であるジナイーダは奔放で男心を弄びつつも愛嬌のある女として描かれ、少年の目を通して彼女を見る我々にも、ありがちな容姿への賛美はないにもかかわらずその強い魅力が伝わってくる。作中ジナイーダが恋に思い悩むさまが空想上の彼女の姿に深く陰影を刻み、その美しさを際立たせている。
奔放で気まぐれで美しい女への少年の恋は、しかし思わぬ結末に終わる……。個人的には、ヴラヂーミル少年の恋の結末と言うよりも、むしろジナイーダに共感しながら読んでいたため、彼女の恋の相手よりも、その後の彼女の行く末のほうに衝撃を受けた。
けれどもこの結末こそが「初恋」の苦さを締めるのにはちょうどよく、それ故になおジナイーダを忘れることが出来ないのであろうと思われる。
ただ綺麗な面ばかりを描いているわけではないにも関わらず、ジナイーダの美しさと、初恋の甘さと苦さが際立った素晴らしい作品であった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2024年2月26日
- 読了日 : 2024年2月26日
- 本棚登録日 : 2024年2月26日
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