倫理観のぐらつきに対して飲みこめずにいる。
ボンドルドのときは、無垢な子どもを目的のために使い捨てる、という行為が明確な非道と位置付けられ、誰もがそれに怒りを表明していたわけだが、今回のワズキャンが行ったこと、ファプタの「復讐」という悲劇に対しては、誰もそこの価値判断を下していない。最終的に誰も居なくなる、かなり破壊的なエンドだったと思うのだが、これで本当に良かったのかどうだったのか。村に入った当初、価値の交換によって身体を「持って行かれる」様を見て取り乱していたリコは、最後何を思いながらいたのだろう、というのがあまり描かれなかったのが残念に思う。リコたちの感情の動きが少なからず軸になってきたのがこの冒険だったはずだが、今回彼女たちは脇役、訪問者の側だったとはいえ、もう少し中心に絡む展開でもよかったのではないか。それこそナナチをベラフから取り戻すための代償の話だとか。
ワズキャンとボンドルドはいずれもわりと似た方向に狂っていたと思うが、大きな違いとしては、ボがどこまでも自分の探求のために行動していたのに対し、ワズキャンのそれは、積み重ねた先に繋がるのが自分であるかどうかは問わなかったところか。あのくだりはすごく好きだった。やれることはいくらでもやる。積み重ねること自体を重視する。人間の歴史や生き方そのものの話だと思う。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
娯楽
- 感想投稿日 : 2021年8月4日
- 読了日 : 2021年8月4日
- 本棚登録日 : 2021年7月27日
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