絵画科と音楽科を持つ芸大が舞台。オペラ『椿姫』と椿姫のモデルを描いたとされるマネの絵画『マリー・デュプレシの肖像』、大きなアートモチーフが絡むユニークなミステリー。森雅裕らしいハード・ボイルド・テイスト、独特なユーモアが程良く配されてます。
物語の幕開けはデッサンの授業シーン。生徒たちの輪の中には、全裸でモデルになっている男子学生…というショッキングな先制パンチをくらう。これは本題には関係のないエピソード、ではあるけれど、こんな芸大の日常、足を踏み入れたことのない一般人にとっては新鮮で刺激的な世界を、物語中でたくさん覗き見できる。
この本を初めて手にした時に、その後書きで、森雅裕が芸大出身で音楽を専攻していたという事実を知り、なるほどなぁと感じ入ったことを思い出す。‘中’を知っている人だからこそ得られる発想と描写が、この物語の宝であると思う。
反面で、これほど特殊な舞台設定でありながら、門外漢の我々を「面白いっ!」と夢中にさせる、純粋なストーリーテラーとして、改めて森雅裕を受けとめた1冊。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
森雅裕
- 感想投稿日 : 2011年1月27日
- 読了日 : 2011年1月27日
- 本棚登録日 : 2011年1月27日
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