まず「風立ちぬ」を読む。
重い病を患って死に向かう最愛の人「節子」と過ごす主人公の日々の心象が、美しい高原の四季と織り合わされたような物語。
「私達がずっと後になってね、今の私達の生活を思い出すようなことがあったら、それがどんなに美しいだろうと思っていたんだ。」
二人は迫る死の影にも絶望することなく、ある完全な幸福感を一日一日噛みしめるように生きている。それは死の手前にある生ではなく、死を越えてある生の物語。
私達をとりまく風景には私達の心象が反映されているし、心象というものも、とりまく風景の反映を受けている。心に思い描くものと目の前に広がるものの間には、思っている程の境界線がないのかもしれない。堀辰雄の文章を読んでいると、心象と具象が独特の織られ方をしていて、ふとそんな気持ちになった。
宮崎駿監督の「風立ちぬ」の、あの夢の世界の表現や、なぜ震災の後にこの物語が選ばれたのか。そんなことも腑に落ちた。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2015年9月19日
- 読了日 : 2018年3月2日
- 本棚登録日 : 2015年9月18日
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