羊をめぐる冒険

著者 :
  • 講談社 (1982年10月13日発売)
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本棚登録 : 3030
感想 : 236
5

春樹ファン、と豪語しながらも、振り返ると1冊だけ読んでいない長編作品があった。それがこの「羊をめぐる冒険」。
主人公の「僕」は、ある日謎の男の訪問を機に、友人「鼠」から送られてきた一枚の「背中に星型の斑紋のある羊」の写真を手掛かりに、その羊と友人を追って旅に出る。与えられたリミットは1ヶ月。
北海道の人里離れた牧場へ、完璧な耳を持つガールフレンドと向かう。

最後まで飽きさせない展開。強力な個性を放つキャラクターも健在だ。(特に羊男。春樹の本にイラストが掲載されるなんて稀だ。)
羊がカラダのなかに入ってくるってどんな感じなんだろう。
とても不気味。だけど物語全体の情景がものすごく私の中でイメージできた作品だった。馬ではなく、牛ではなく、「羊」を選んだことも秀逸。村上春樹の世界観にとてもうまくハマる動物な気がする。

鼠と主人公との会話がクライマックス。鼠が自分の弱さについて語るシーン、とても緊張感がある。
でも、全体を通すと、「僕」はあまりにも切ない。失うものが多すぎる。
最後のジェイとの会話が救い。ジェイはカッコいい男だね。
「風の歌を聴け」「1978年のピンボール」の続編。この二作は読んだことが有るんだけど、もう一度読み直してみる。

「やれやれ」ってお約束のフレーズは、この時に生まれたのだろうか。
それも含めて、春樹作品をもっと読み込んで行こうと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2013年7月17日
読了日 : 2013年7月17日
本棚登録日 : 2013年7月17日

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