コモンズの地球史――グローバル化時代の共有論に向けて

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著者 :
隆一郎さん 経済・政治   未設定

 本書は、著者、秋道智彌が36年間、コモンズ論に関する現地調査を東南アジア、オセアニア、中国、日本各地で実施し、その調査研究の結果を学会やシンポジウムなどで発表、さらに論文や論考として世に出してきた成果が結実したものである。

 本書は、序章、3部14章、終章からなり、その概略は、つぎのようにまとめられている。「本書では人間が自然界の資源を利用し、所有するうえでどのような社会的なしきたりや実践をはぐくんできたのかについてくわしく取り上げる。第1部では資源を共有することの意味について、資源、海、水、森、食に着目して議論してみたい。第2部では、海洋世界に展開する共有慣行や漁場紛争などを吟味し、人類にとっての海のもつ意味を明らかにしたい。第3部では、内陸世界における共有地や共有慣行に光を当てる。ここでは、農地や森林、河川や池においてみられる共有の慣行について考察する。そして、最後に資源の利用、海と陸の世界に展開する資源利用の実態から、自然はだれのものであるのかという問いにたいする見方を提起してみたい」。

 この古くて新しい問題であるコモンズの議論を理解する「キーワードは時間変化である」。著者は、終章の最後の節「グローバル化時代の共有論」で、つぎのようにまとめている。「いま一度、本書のなかで提起したコモンズ論が、現在という時点からは一年から二年、ないし数十年前に観察された事象にもとづいていることに注意を喚起したい。資源の定義について述べた部分で、資源が歴史的に不変ではなく、つねに変化する契機をはらんでいることに注意を喚起したい。だが、急激な変化の反面、依然としてかわらない側面があり、保守的な面も時代のなかでその意味を問われてきたことを理解しておくべきなのだ。問題は、前述した「つながり」への認識をあらたにすることであろうかとおもう。生態系サービスの機能についての議論で、コモンズ論が抜けていることは指摘したとおりであるが、いいかたをかえれば、自然と人間、人間と人間をつなぐ関係性に着目することがもっとも重要であろう。つながりは、本書であつかったなわばりとおなじ土俵で議論すべきテーマでもある」。

 そして、つぎのように訴えて、本書を終えている。「コモンズ論の今後は、それぞれの地域に生きる人びとの生きざまに直結していることはまちがいない。グローバルな現象にまどわされることなく、地域における共有問題に徹底的なメスを入れ、人びとの生きざまに眼をそそぐことからグローバルな変化をみる視点なしに、真のコモンズ論は生まれてこない。新しさもない」。

 本書巻末には、2段組で17頁にわたって日本語、中国語、英語文献が並べられている。しかし、著者がおもに参考にし、信頼したのは、これらの文献ではない。本書を読むと、著者が生態系を注視し、風や匂いにも神経を研ぎ澄まして、からだ全体で理解しようとしていることがわかる。そして、そのなかで暮らしている人びとの話に耳を傾け、「自然と人間、人間と人間をつなぐ関係性」をつかもうとしている。

 「自然はいったいだれのものなのか?」という問いにたいして、著者は「海と陸の世界に展開する資源利用の実態」から、その見方を提起している。だが、その答えは、簡単ではない。まずは、ひとりひとりが、限りある資源を利用していることを自覚することからはじめねばならないだろう。

レビュー投稿日
2011年1月13日
本棚登録日
2011年1月13日
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