『学問のすすめ』に倣ったタイトル付けだそうで、さすが陸の王者である。
まあ彼らお身内の集いの集成ではあるが、そこは大看板として広く本邦社会に投げ掛けを行ってもこられた先生のその背景を伺うこともいいだろう。阿闍世コンプレックス、モラトリアム人間、自己愛人間、対象喪失などなど。
初めは分析から入ったものの、やがてその理論体系の難しさ、教条主義や治療効果の程などから、離反した人々はフロイト存命中も死後も枚挙にいとまなく、そこから後に一家をなした者もまた少くない。要するに臨床心理学の歴史とはフロイトVSアンチフロイトで簡単に整理できてしまうほどである。
なので本家の暖簾を守り続ける苦労にはひとかたならぬものあったろうと推察するわけだが、本書の後半部にいたるにつけ、真実追求の近代主義がポストモダンの潮流に浸りはじめている気配がぷんぷんして、それどっかで聞いたことある、という概念やアプローチではいまさらありがたがってばかりもいられない。
フロイトはニーチェ(ばかりでなくほとんどの哲学を)に触れることを敢えて回避した。この辺の事情をもう一度振り返ってみると精神分析の今日的意義を考える上で役に立つかもしれない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
臨床心理学
- 感想投稿日 : 2014年12月2日
- 読了日 : 2014年12月2日
- 本棚登録日 : 2014年12月2日
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