こういうのを私小説と呼ぶのか知らん。
昭和が隅々まで沁みこんだような下宿風アパートメント『加寿子荘』での日々が書き連ねられています。
男から女に性別を変えて『加寿子荘』に舞い戻るという筋書きは耳目を集めるのに十分だけど、それがテーマではないのです、まったくもって。
ここを強調させていただきたい。
大家の加寿子さんをはじめとする古い人たちに対する親しみ。
神楽坂のど真ん中に聳り立つ高層マンションに対する憎悪とほんの少しの羨望。
能町みね子というフィルターをとおして覗く世界がとても好き。
嫉妬してしまう、世界をこんな風につかまえてしまうなんて、こんな風に表現してしまうなんて。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
エッセイ
- 感想投稿日 : 2016年5月12日
- 読了日 : 2016年5月12日
- 本棚登録日 : 2016年5月9日
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