最後の冒険家 (集英社文庫)

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レビュー : 41
著者 :
コナン.O.さん  未設定  読み終わった 

著者の石川直樹氏は、1977年生まれの写真家。2001年に、当時世界最年少(23歳327日)で七大陸最高峰登頂を成し遂げている(それでも本人は「自分は冒険家ではない」と本書でも語っている)。本作品は、2008年に出版され、開高健ノンフィクション賞を受賞。(2011年文庫化)
本作品は、熱気球(中軽量級)で、長距離世界記録、高度世界記録、滞空時間世界記録などを樹立した冒険家・神田道夫氏の、太平洋横断の挑戦を描いたものである。著者の石川氏は、2004年の初回の挑戦に副操縦士として同乗し、失敗して太平洋に着水しつつ神田氏とともに九死に一生を得たが、神田氏は2008年に単独で再挑戦し、失敗、行方不明となった。
通常の冒険ノンフィクション物は、自らの体験を冒険家本人が綴るもの(植村直己氏、角幡唯介氏など)とノンフィクション作家が描くもの(沢木耕太郎が、山野井夫妻のヒマラヤ行を描いた『凍』など)に大別されるが、本作品は、初回の冒険行で同乗しつつ、再挑戦においては、リスクがとれないとの自らの判断で同行を断念した石川氏が、「神田道夫さんに捧ぐ」として書いたものである点が、ある意味異色である。(神田氏の再挑戦が成功していたら、この作品は書かれなかったのではあるまいか。。。)
そして、本作品は、「冒険家」石川氏によるものだからこそ、神田氏の他人とは異なった冒険スタイル、神田氏の神田氏たる所以(魅力とも言えようか)が浮き彫りになっていると言える。初回の太平洋横断に失敗し、奇跡的に救助された船で米国に向かっている最中に、既に再挑戦のアイデアを口にする神田氏に対し、石川氏は、「冒険はリスクをどんなに減らしていっても、最小限のリスクだけは最後まで払拭できない。だからこそ、その行為は冒険といわれる。運も実力も必要だけれど、実力さえあればほとんど乗り切れて、あとの数パーセントを運に賭けるというの冒険ならぼくにも理解できるのだ。しかし、実力よりも運が試される比率のほうが多いのであれば、その遠征に参加すべきではないとぼくは考える。・・・というやり方は、神田らしいと言えば神田らしいのだが、ぼくは同意できなかった。彼の冒険に対する姿勢は、傍から見ると危なっかしいほどに攻撃的であるとともに感覚的で、だからこそ数々の優れた記録を残せたともいえるのだろうが、石橋を叩いて渡るという発想からはあまりにも遠く離れ過ぎていた。「楽観的」、少なくともぼくにはそう感じずにはいられなかった」と記している。
石川氏にして描き得た、「最後の冒険家」神田道夫氏の軌跡である。
(2017年6月了)

レビュー投稿日
2017年6月24日
読了日
2017年6月24日
本棚登録日
2017年6月12日
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