根岸豊明氏(1957年~)は、日本テレビの記者を経て、現在、札幌テレビの社長。
本書は、著者が昭和60年11月から64年1月まで宮内庁担当記者として身近に接した、現在の徳仁天皇の20代後半の姿、即ち、若者としての感性で日本社会の実相に触れ、海外の王室と交流し、当時の昭和天皇、明仁皇太子を支えた日々の姿を描いたものである。
具体的には、昭和58年からの2年間の英オックスフォード大学への留学を終えて、60年10月に日本へ帰国する際に米国を3週間かけて訪問した旅(レーガン大統領との会見、プリンストン大学での女優ブルック・シールズとの対面、終戦直後に明仁天皇の英語教師を務めたバイニング夫人との面会、ニューヨーク訪問(ウォール・ストリート、国連本部ビル、エンパイア・ステートビル、五番街等)、ボストン訪問、ニューオリンズ訪問、デンバー訪問、ロサンゼルス訪問等)、帰国後の国内の様々な組織・施設の視察(国会、裁判所、警察、新聞社、テレビ局等)、昭和61年の英チャールズ皇太子・ダイアナ妃の訪日、徳仁天皇の趣味である“宮様登山”、昭和62年3月のネパール、ブータン、インドなどの南西アジアの王室を訪問する旅、更に、平成5年の雅子さまとのご結婚に至る、言動・エピソードが、宮内庁担当記者という、我々一般国民とは異なる距離感・温度感で綴られている。
本書の出版は本年2月であるが、徳仁天皇は5月1日に天皇へ即位し、既に令和の時代は始まっている。平成天皇は「国民に寄り添う」天皇像を国民に深く印象付けて退位されたが、徳仁天皇はどのような天皇になるのだろうか。。。時代が変わったばかりの今、その関心と期待には大きなものがあるが、多くの人間にとって、青春の日々がその後の人格や考え方の形成に大きな影響を与えることを考えれば、本書に描かれた若き日の徳仁天皇の姿が、その手掛かりを与えてくれることは間違いないであろう。
今だからこそ知っておきたい、新天皇の若き日の肖像に触れられる一冊である。
(2019年6月了)
- 感想投稿日 : 2019年6月16日
- 読了日 : 2019年6月16日
- 本棚登録日 : 2019年5月1日
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