縛られた巨人-南方熊楠の生涯- (新潮文庫)

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  • 新潮社 (1991年12月24日発売)
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南方熊楠(1867~1941年)は、江戸時代最後の年に生まれ、明治・大正・昭和を生きた、生物学・民俗学などの分野で活躍した“知の巨人”である。
熊楠は、故郷の和歌山から東京へ出て、米国、中南米、ロンドンに居を移し、和歌山に戻って没するまでの75年間に、英語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・スペイン語・ラテン語等十数ヶ国語を身に着け、世界でも類を見ないレベルの菌類の標本を作製し、英の科学雑誌「ネーチュア」に多数の論文を寄稿し、ロンドンで中国の革命家孫文と深い親交を結び、晩年には、南紀白浜に行幸された昭和天皇へご進講した。
その才能と研究実績だけでも驚くべきものだが、未だに少なからぬ関連の書籍が出版され、頻繁に雑誌などでも特集されるのは、熊楠の妥協・打算のない情熱と、その常識破りとも云える言動に、そうしたものを忘れかけている現代の多くの人々が憧れを持つからなのではないだろうか。
熊楠の人間的な魅力を存分に味わえる伝記である。
(2014年5月了)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2016年1月11日
読了日 : -
本棚登録日 : 2016年1月11日

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