神は詳細に宿る

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  • 青土社 (2019年1月25日発売)
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養老孟司(1937年~)氏は、人のあらゆる営みは脳という器官の構造に対応しているという「唯脳論」を唱えた解剖学者で、『バカの壁』(2003年)をはじめ、一般向け著書も多数発表している。『バカの壁』は、同年のベストセラー1位となり、題名の「バカの壁」は新語・流行語大賞も受賞した。
本書は、青土社の月刊誌「現代思想」や「ユリイカ」、集英社の季刊誌「kotoba」、新潮社の月刊誌「新潮45」などに、2009~2018年に掲載されたエッセイ8篇を集めたもの。
8篇に通底するテーマは、著者のこれまでの創作活動で一貫する「人間の脳・意識」であるが、私が最も印象に残ったのは、随所に出てくる「死」と「生」について語った部分である。
「死」について・・・「死は一人称、二人称、三人称と専門家は言うのですが、赤の他人は三人称の死ですね。これは知識にしかなりません。関係がないのです。一人称の死はこれも関係がないのです。自分が死んだら自分はいないのですから。死というのは実は二人称しかない。・・・それをひっくり返すと、生きているということは二人称で、なんと世のため人のためだという、極めて簡単な結論が出る。」、「(ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』から)人生の意味は自分の中にはない」、「一人称つまり自分の死は要するに「ない」、だからまあ考えたってしょうがないということ、もう一つは、死は二人称であり、親しい人の死が死である、ということ。」等
「生」について・・・「死を想うなら、生きそびれないようにすることであろう。現代人のいちばんの危うさは、生きそびれることである。」、「折角生きているんだから、死ぬことなんか考えて、時間をムダにしないほうがいい。」、「以前、ホスピスで働いていた若い女医さんに、「ホスピスでいちばん上手に生きている人はどういう人だと思いますか?」と尋ねたことがあります。彼女の答えは、「その日その日を一生懸命生きている人です」というものでした。・・・一日一日を積み重ねていくこと。大事なのはそこだと思いますね。」等
また、書名の「神は詳細に宿る」は、収録されたエッセイ1篇の題名であるが、一般に、あるドイツのモダニズム建築家や美術家の好んで使った言葉と言われているが、著者はその原義を「自然の詳細を見て驚き、そこに造物主の存在を見る」ということであろう」と述べている。
初出はいずれも硬派の雑誌で、必ずしも読み易い内容ではないが、随所に気付きの得られるエッセイ集と思う。
(2019年4月了)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2019年4月13日
読了日 : 2019年4月13日
本棚登録日 : 2019年3月22日

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