ホテルメドゥーサ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2020年12月24日発売)
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本棚登録 : 193
感想 : 12
3

北欧・フィンランドの森。
残念ながら一度も訪れたことはないけれど、映画『かもめ食堂』で観たことならある。
深くて濃い緑に溢れ、張り詰めた空気が漂い森全体が静まりかえる。空から微かに降り注ぐ木漏れ日が辺りを柔らかく包み込む。神聖で神秘的な空間。
そんなアルファ波がたくさん発生しそうな場所になら、異次元へ繋がるドアがあってもおかしくない。

人生をやり直したい、と心から願う4人の日本人が時を同じくして、何か不思議な力に導かれるようにはるばるフィンランドの森の中に佇む"ホテルメドゥーサ"に集まった。
いざ異次元へ、となった時、本当に行くべきか悩む4人が森の中で話し合う。
年齢も性別も育った環境も様々な4人は、異次元への期待と今いる星・地球について思いを巡らす。

その中で特に印象深いのは"後戻り"について。
この星のいいところは後戻りできないこと、と言う一人の言葉「俺の人生、正直やり直したいことばっかりだけど、もしも本当にやり直しがきいたら、全然前に進めなくてどこにも行けなくなりそうだもん。やり直せないから、どうしようもなくなって、こんなところまで来ちゃったわけですよ。後戻りできないからこそ、今、俺はここにいる」
異次元の世界のように、何度でもやり直しし放題なのは一見良さそうに思えるけれど、それでは一向に先へは進めない。やり直しなしの一度きりの人生もまたよし、と思えた。

一度きりの人生、その場に留まるのも先へ進むのもその人次第。どちらが正解なんてない。
迷って悩んで自分の気持ちを受け止めた末に、自分で決断することにこそ意義がある。
フィンランドの母なる森らしく、迷える人々を優しくおおらかに包み込んでくれる物語だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年5月13日
読了日 : 2021年5月12日
本棚登録日 : 2021年5月9日

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