伊与原さんは3作目だけれど、今回が一番読み応えがあって面白かった。
マイペースな理系大学准教授・宇賀神と彼に振り回される大学院生・圭のコンビのやり取りもとても楽しいので、ぜひシリーズ化してほしい。
非科学の中に存在する、科学を装ったニセ科学。
でたらめな科学用語をちりばめ、あたかも科学的であるかのように見せかけ人々を騙す。
人の善意に付け込む汚染(コンタミ)された科学を暴く長編サスペンスは、私のようなアンチ科学の人間にも分かりやすくてとても面白かった。
我々の身近に潜むニセ科学。
アンチ科学側からすると、それがインチキかもしれないと頭では分かっていても、つい心が欲する方を選んでしまう。
人は理性と感情の間を揺れ動き惑う弱い生き物なのだとつくづく思った。
「科学はこの世のすべての人間に等しく同じものを見せる」
「どれだけ教育を受けようとも、ほとんどの人間は、自分の見たいものしか見ず、信じたいことしか信じないだろう。そうでもしなければ、この世はあまりにも生きづらい。でも、そのかたわらで、科学はただ淡々と、万人に同じものを見せ続ける」
考えれば考える程、科学と非科学の間に広がるグラデーションの海で、私も溺れそうになる。
科学の奥深さにますますハマりそうだ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
伊与原新
- 感想投稿日 : 2019年3月10日
- 読了日 : 2019年3月10日
- 本棚登録日 : 2019年3月9日
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